吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

9<ナイン> 〜9番目の奇妙な人形〜

 期待したほどの出来ではなかったのでレビューは書かないつもりでいたが、まだ上映しているし、無視するには惜しい作品なので、少しだけ感想を。


 映像は素晴らしいのだが、ストーリーにひねりがなさ過ぎる。人類が滅亡した後の世界という、どこかで見た光景、どこかで見たお話、どこかで見た…既視感ばかりで新鮮さがない。

 
 ストップモーションアニメかと思ったけれど、完全なCGだそうだ。ここまでできるようになったのか! ティム・バートンのテイストがあちこちに見られるが、オリジナルは学生が卒業制作用に作った11分の短編アニメ。それを見たバートンが惚れ込んで長編に作り直し、くだんの学生シェーン・アッカーに監督させたもの。確かに造形は魅力的だし、荒廃した未来社会のダークさもゾクゾクする。


 しかし、やはりあまりにも既視感がありすぎる。襲いかかる機械のビーストは「スターシップ・トゥルーパーズ」だし、設定はそのまんま「ウォーリー」だし、機械と人間の戦争なんて「マトリックス」じゃあるまいし。


 悪くはないけど、ドンパチドンパチと派手なアクションシーンが連続する映画を続けてみると食傷気味となる。もう少しストーリーの凡庸さをなんとかしてほしかったね。逆に言えば、こういう映画を自宅のテレビモニターなんかで見た日には魅力半減以下。ストーリーで引っ張ることができない分、映画館の大画面と音響で映像を堪能して欲しい。麻袋のような人形たちのキャラクターデザインが秀逸。ちょっと気持ち悪いという気がしないでもないが、アニメファンならぜひ劇場で見ましょう。


80分、アメリカ、2009
監督: シェーン・アッカー、製作: ティム・バートン、脚本: パメラ・ペトラー、音楽: デボラ・ルーリー、テーマ曲: ダニー・エルフマン
声の出演: イライジャ・ウッドジェニファー・コネリークリストファー・プラマー、ジョン・C・ライリー