吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ナミヤ雑貨店の奇蹟

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 タイムスリップもののファンタジー。2012年に始まり、1969年、1980年、1988年という年に起きる事柄が主人公たち非行少年3人組の人生を変えていく。

 2012年の深夜、強盗を働いた幼馴染の3人組の若者は、廃屋になった元雑貨店に逃げ込む。その「ナミヤ雑貨店」はかつて一人で店を切り盛りしていた主人が、明るい悩み相談を受け付けていたことで知られていた。悩みはすべて手紙の形で店のシャッターから投函され、返事は翌日に店の壁に貼りだされた。時に深刻で重い悩み相談が寄せられる時は、その回答は牛乳箱(懐かしい!)の中に封書で入れられていた。

 そして2012年の運命のその夜、なぜか店のシャッターの投入口から次々と手紙が投函されてきた。しかもその日付は1980年である。不思議なこともあるものだと思いながら若者たちは自分たちが返事を書くことにした。そうして、不思議な縁で結ばれた人々のドラマが動き始める……。

 タイムスリップぶりがいまいちわかりにくい。というのも、2012年では一晩の出来事なのに、1980年では時間の流れがもっと幅広い。つまり2012年では時間が短縮しているというか濃縮しているわけだ。この時間軸の長さの違いで観客は戸惑うかもしれない。さらに1988年に飛んだりいろいろあるのだが、場面が2012年に戻ったときにちっとも時間が過ぎていないことを理解していないとわけがわからなくなる。

 人の運命は変えられるのか? 本人の努力と「運」を使った成功者と非行少年たちの因縁とは? 辻褄の合わないことがいろいろあるのと、1980年代の売れないシンガーソングライターの歌が一つの重要なキーになるのに、その歌がいまいちピンとこない点がつらい。劇中で歌っているのよりも最後に山下達郎自身が歌うほうがずっとよい。

 ともあれ、親から捨てられたと思って非行に走っていた少年たちが更生するハートウォーミングなファンタジーであった。現実はそんなに甘くないと思うが。(Amazonプライムビデオ)

2017

日本  129分
監督:廣木隆一
製作:堀内大示ほか
原作:東野圭吾
脚本:斉藤ひろし
撮影:鍋島淳裕
音楽:Rayons
主題歌:山下達郎 『REBORN』
出演:山田涼介、村上虹郎寛一郎林遣都成海璃子門脇麦鈴木梨央山下リオ根岸季衣小林薫萩原聖人吉行和子尾野真千子西田敏行