吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

マダムのおかしな晩餐会

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 舞台はフランスだが、主人公はアメリカ人の富裕層とそのスペイン人メイド。という、国際色豊かな物語なので、それぞれの「国民性」が出ているとも言える。

 アメリカ人の富豪夫妻がパリに引っ越ししてきたばかり。彼らは上流層の友人たちを招いてディナー・パーティを自宅で開くことにした。しかし女主人のアンは、招待客の数が13になることを知り、慌てる。やむなくメイドのマリアを謎の富豪夫人に仕立て上げて席に着けることにした。「決して何もしゃべってはいけない、酒も飲みすぎ注意」と言い聞かせられたのにも関わらず、マリアは緊張のあまりワインをがぶ飲みして下品なジョークで周囲の笑いを誘う。アンは激怒したが、そのマリアに惚れてしまった英国人トムは、マリアがスペイン王家の親戚だという偽情報をすっかり信じ込んで俄然マリアにアタックを開始する。。。。

 というコメディ。中年過ぎの男女の熱愛に心をときめかせ、舞い上がるマリア。それを嫉妬心に満ちた憎悪の目で見るアン。そこには、いくら金持ちでも満たされないアンの不幸があった。明らかな階級社会であるフランスらしい人物配置を施したこじゃれた映画だ。

 マリアを演じたロッシ・デ・パルマはスペイン映画の常連で、大変達者な役者なのだが、顔が濃すぎるためわたしには苦手なタイプ。とはいえ、彼女の一挙手一投足に観客はハラハラさせられ、感情移入していくだろう。マリアは貧しいスペイン移民としての自らのアイデンティティを主人のアンに踏みつけにされるが、最後は堂々と屋敷を出ていく。それは一見意気消沈とした悲しい歩みなのだが、ラストシーンがハッピーエンドなのかどうか、観客の解釈に任されているファジーな終わり方。なかなか憎い。(Amazonプライムビデオ) 

2016
MADAME
フランス Color 91分
監督:アマンダ・ステール
製作:シリル・コルボー=ジュスタンほか
脚本:アマンダ・ステール、マシュー・ロビンス
撮影:レジス・ブロンドゥ
音楽:マチュー・ゴネ
出演:トニ・コレットハーヴェイ・カイテル、ロッシ・デ・パルマ、マイケル・スマイリー