吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

カサンドラ・クロス

  
 勝手にシリーズ化しました、おうちで映画を見ようシリーズ、第2作。
 時節柄、こういう映画を見てみました。
 公開当時、ずいぶんヒットしたような気がする。確か、深夜放送で浜村淳さんがすごい盛り上げ方で紹介していたような。で、たぶんこれまでもテレビ放映などで見ていたんだと思うが、改めて見てみると、設定が無茶苦茶。そもそもあの若きテロリストってなんなの? 何をしにスイスのWHOの、しかもその中の細菌研究施設に潜り込んだわけ? 何をしたかったのかわからない謎の過激派。登場するなりあっという間に死んでしまい、生き残った一人も感染力の強い病原菌に罹患して肺炎を起こし、潜り込んだ大陸横断鉄道の中で死んでしまう。彼と接触した犬も重症。感染した過激派青年は発熱した身体で列車内を歩き回っていろんな人と濃厚接触していたから、もちろん乗客は次々に発症。あららー、新型コロナより怖いですよ、これ。感染率60%ですって。しかも致死率100%。
 そんなえげつない菌がまき散らされているのに、主人公の医師とその元妻は絶対に感染しないのだ!
 主人公医師はリチャード・ハリスで、アクションが似合う。その元妻ジェニファーがソフィア・ローレン。大女優は御年42歳。脂の乗りきった色気たっぷり女性を演じているが、派手派手な顔の造りにちょっと引いてしまう。もっと大御所はエヴァ・ガードナーで、このとき54歳。大富豪夫人で若いツバメを連れて乗車中、という設定で、そのツバメちゃんがマーティン・シーン。いや~、皆さんなかなかに往年のスターぶりが懐かしい。その他とにかく有名俳優オンパレードなので、こういう設定の甘いアクションものにはぴったりかもしれない。
 感染者1000人の列車に乗り込んでくるアメリカ軍兵の防護服姿がいまとあまり変わらないのに驚いた。防護服ってこの当時から基本は変わってないのね。色も白だし。で、この防護服を着た兵士たちがへっちゃらで民間人に発砲しまくる。ありえんやろー。1000人の乗客全員を列車ごと死なせて、謎のウィルスの件を秘匿してしまおうという魂胆だ。この悪だくみをするのがアメリカ人の諜報部員バート・ランカスター
 この映画はイタリア資本で作られただけあって、悪役はアメリカ人である。悪いのはアメリカの秘密細菌兵器開発者と、それを奪おうとした(?)スウェーデンの過激派。時代がまだ1970年代後半なので、戦争の記憶をトラウマとして抱えている人が至るところに存在する。ユダヤ人の乗客は列車が予定を変更してポーランドに向かっていると聞いただけでパニックになる。ここはいかにもヨーロッパ映画的な設定だと思われるし、悲しい過去を持った初老のユダヤ人商人が気の毒で印象に残る。この彼がきっとなにかしでかすに違いないとにらんでいたら、最後は。。。。
 設定は大甘でも、最後のアクションはなかなか見せます。特に圧巻はなんといっても列車転落シーン。アッと驚く展開なので、ここがアメリカ映画と違うところ。
 テーマ曲もヒットしたね、これは何度も聴いた覚えがある。(Amazonプライムビデオ、WOWOW)
1976
THE CASSANDRA CROSSING
イタリア / イギリス
 128分 
監督:ジョルジ・パン・コスマトス
製作:
カルロ・ポンティルー・グレイド
脚本:ジョルジ・パン・コスマトスロバート・カッツ、トム・マンキウィッツ
音楽:
ジェリー・ゴールドスミス
出演:
リチャード・ハリスバート・ランカスターソフィア・ローレンエヴァ・ガードナーマーティン・シーンイングリッド・チューリンO・J・シンプソン、ライオネル・スタンダー