吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

マイケル・ジャクソン THIS IS IT





 全世界で1億400万枚売れたアルバム「スリラー」のうち1枚はわたしが買ったLPだ。1980年代初め、毎週毎週毎週、土曜の深夜に放送された音楽番組を飽きもせず繰り返し見た。マイケルはそれまでの音楽シーンの常識を打ち破るプロモーションビデオを見せてくれた。あの番組をわたしはMTVだと思っていたが、さきほどウィキペディアで調べたところ、MTV日本版の放送はもっと後の時代のようだ。ではあの番組はなんというタイトルだったのだろう?



 「スリラー」を見ながらムーンウォークを真似して踊っていたのはわたしです。もちろん、真似なんてできなかったのだけれど。あの頃の若者の多くがマイケルに傾倒してムーンウォークをまねていたのではないか?



 そして、およそ30年ぶりにマイケルの姿を見た。とても50代とは思えない若々しい姿で、懐かしい曲の数々をマイケルは歌って踊っているではないか。マイケルはわたしと同い年。彼がジャクソン5の一員としてかわいらしいボーイソプラノで歌っていたころから知っている人間としては、この映画をなぜ今まで見なかったのだろうと後悔することしきりだった。もともと劇場公開用映画として撮られたフィルムではないというのがわたしを映画館から遠ざけた理由だ。しかし今般、マイケルの一周忌に再公開された本作の、公開最終日、それも最終上映会に滑り込んで、映画を見ながら「なぜ今まで見なかったのか。何度でも見たい。これが最後なら、何年かぶりで買いたいDVDが見つかった」と感動していた。



 リハーサル場面ばかりを映した映像は、確かに万全ではない。マイケルはフルボイスで歌っていないし、ところどころ、とても歌いにくそうにして、あろうことか音を外してしまう場面もある。しかしその分、ステージにかける彼の姿勢や、スタッフへの指示出しなどが撮影されていて、彼が一歌手としてだけではなく、プロデューサーの役目も負っていたことがよくわかる。



 マイケルのバックダンサーたちも超一流で、彼らのオーディション場面も見事だ。あれだけすばらしいダンサーばかりで、どうやって当落を決めるのか不思議なぐらい。ミュージカル映画コーラスライン」を思い出させる。



 と、感動ばかりではなく、実は最後のほうでバラード曲が続く場面では爆睡してしまった。なんというもったいないことを! この映画は最後の最後まで引っ張る引っ張る。エンドクレジットが終わってもまだカットがある。そして珍しいことに、劇場内が明るくなるまで、観客は誰一人として席を立たなかった。すばらしい。本当に素晴らしい。そして残念だ。こんな才能が亡くなったとは!

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THIS IS IT
111分、アメリカ ,2009
監督: ケニー・オルテガ
出演: マイケル・ジャクソン