吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習

下品すぎて笑えない! アメリカもカザフスタンも両方をコケにする、タブー破りのコメディ・ドキュメンタリー。

 主演俳優はイギリス人だとはちっとも知らなかった。コーエンという名前からしてユダヤ系だけど、ものすごいユダヤ差別ネタには参った。ユダヤも同性愛も排泄もフェミニズムも人種差別もなにもかも過激に下品に笑い飛ばしバカにしまくる。そりゃあまあ、狙いはわかるけどね、これをコメディとして笑い飛ばせるコードがわたしにはない。

 一箇所、面白いと思って少しは笑えたのはボラットカザフスタン国歌をアメリカ国歌に乗せて替え歌で歌う場面。「われわれカザフスタン人もアメリカのテロ戦争を支持しています!」と演説して満場の観客から拍手喝采を受けたのはいいけれど、調子に乗って「イラク国民を皆殺しだ! 徹底的に破壊してトカゲ一匹いない砂漠にしてしまえ!」と叫びだす。しまいには「カザフスタンは偉大な国〜♪」と「星条旗よ永遠なれ」に乗せて歌ったものだからブーイングの嵐。これは面白かったね。

 どこまでがやらせでどこまでがドキュメンタリーなのか全然わからない映像の数々は映画の持つ虚構性をうまくついていたと思うが、それにしてもあまりにもやりすぎているので、度を超すと白けてしまう。

 「バカには理解できないバカです」というのがキャッチコピーなので、きっとわたしはボラット以下のバカなんだろう。

 ところで、つい最近『カザフスタン 草原と資源と豊かな歴史の国』角崎利夫著、早稲田出版 というカザフスタンの魅力を満載した本が出たのだけれど、これってこの映画のせい(笑)? そういえば、カザフスタン駐日大使館も2006年10月に自国紹介のパンフレットを作ってます。やっぱ映画のせいでネガティブなイメージがついちゃったからねぇ。ちなみにこの映画、いろんなとこで名誉毀損の裁判起こされているそうです。やっぱり。いくらアメリカ文化を批判する社会派(!?)ものだからって、下品すぎるので、日本ではR-15です。(レンタルDVD)

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BORAT: CULTURAL LEARNINGS OF AMERICA FOR MAKE BENEFIT GLORIOUS NATION OF KAZAKHSTAN
アメリカ、2006年、上映時間 84分
監督: ラリー・チャールズ、製作: サシャ・バロン・コーエン、ジェイ・ローチ
脚本: サシャ・バロン・コーエンほか、音楽: エラン・バロン・コーエン
出演: サシャ・バロン・コーエン、ケン・ダヴィティアン、ルネル