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吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

愛おしき隣人

映画

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 2012年のベスト作品でレビュー積み残しをさらえていくシリーズ第5弾。

 

 息子Y太郎と二人でDVD鑑賞。

子「なんやこの映画、この間合いはカウリスマキみたいやな」

母「カウリスマキより面白いやんか」

子「ふーむ、なんかなぁ…」

母「ふーむ、シュールやなぁ。なんとも言えず、可笑しい」

子「おおっ、カメラが動いてる! ほら、見てみ、画面の端っこを見たら、カメラが動いてるのがわかる」

母「ああっ、ほんまや! ものすごく微妙に動いてる。パンしてるやんか」

子「すごいな、これは。世界最遅のパンやな」

母「なるほどなぁ。こういうことがしたいのか。あの男が倒れて画面からはみ出したら困るから、不自然にならない程度にゆっくりパンして、男が倒れてからも全身がカメラに収まるようにしたんやね。すごいね」

子「むちゃくちゃ凝ってるな、この映画」

母「この可笑しさと懲り方はすごいね」

子「あ、この部屋はどうやって撮ったんかな。電車の中か?」

母「部屋が動いてる…」

子「うーむ、あの飛行機、どうやって撮ったんやろ。ミニチュアかな、ほんまもんを後ろから追いかけて撮ったんかな」

母「おおっ、飛行機がどんどん増えている。シュールやねぇ」

 

 という、実に「どうやって撮ったのか」という不思議に溢れた映画だった。なにげないシーンが凝っていること凝っていること。誰もかれもわが身の不幸を嘆く人々が登場するが、その不幸もどこか滑稽で、シリアスなはずなのにそのシリアスさを少しずつ外されている。中年夫婦のベッドシーンにはのけぞりそうだった。ロイ・アンダーソン監督作では「散歩する惑星」でも巨体夫婦のベッドシーンがあり、この監督は中年太りが好きなのか、豊満すぎる女性が登場する。で、今回は太った妻に対して骸骨のような夫が対置され、しかも妻が上に乗ってほとんど夫を虐めているかのようなセックスシーンが繰り広げられる。夫が淡々と仕事の失敗を語るのを完全に無視して一人腰を振って嬌声を挙げる妻。このディスコミュニケーションぶりも見事であった。

 全編こんな感じなんだけれど、そんな、笑っていいのか泣くべきなのかよくわからない愛すべき人々の様子が描かれ、人々の不幸をちょっとずつ緩和するようなゆり戻しの面白さが用意されている。そう、たとえ今日が不幸でも明日はやって来るんだよ(その明日というのが幸せなのかどうかはわからない)。そういう、ロイ・アンダーソンの冷徹な人生観が見えてなかなかに面白い。最後は全員が空を見上げる。いったい何があるのだろう? 空は明るい未来の隠喩か。

 こうなると「スウェーディッシュラブ」を観たくなるねぇ。

DU LEVANDE

94分、スウェーデン/ドイツ/フランス/デンマークノルウェー、2007

監督・脚本:ロイ・アンダーソン、音楽:ベニー・アンダーソン

出演:ジェシカ・ルンドベリ、エリック・ベックマン、エリザベート・ヘランダー、ビヨルン・エングルンド