吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

真夜中のカーボーイ

 帰宅途中の駅のホームで長男Y太郎からメールを受信。映画見に行こうという誘いについ乗ってしまって、二人で午前十時の映画祭(2年目は十時だけではなく一日中上映)へ。

 見終わってY太郎が「これ、鬱映画やろ。これを見たらもう一本映画を見ようという元気が出ぇへんやろ」と言う。わかってたら誘わないでほしいね、こんな救いのない映画。全然期待したものと違ったからがっかり。Yは去年の午前十時の映画祭でもこの作品を観ていたのだった。「去年初めて観たときはがっくりと落ち込んだわ。2回目はそれほどでもない」
 残念ながらわたしにとっては好きな映画とはいえなかったけれど、こういう青春の暗さと孤独を描いた映画が好きな人にはジンと来るだろうことはよくわかる。



 本作はアメリカ版「8 1/2」と言ったところか。サイケデリックな騒々しさと、女に甘える男のいいかげんさ、幻想的な演出はフェリーニと同じだけれど、フェリーニにあった豊穣さや女性への畏敬の念がここにはない。

 「田舎から都会に出てきたらひどい眼に遭う、という話やな、要するに」とYがまとめてしまったが、そんなふうに要約したら身も蓋もないが、実際そういう映画だ。自意識だけを肥大させた若者たちが都会の中で自堕落に生活してうらぶれて死んでいく、という単に悲惨な映画。これこそ自業自得というか自己責任と言うべきか。

 しかし実は田舎から出てきたジョーには暗くて悲惨な過去があったらしいことはフラッシュバックする回想シーンから垣間見える。主人公たちの愚かさが際立つストーリーには魅力を感じないが、映画技法というか演出、映像の使い方、特に光と影の使い方にハッとさせるものがあって、最後までそこだけは引き込まれた。

 いや、もっと引き込まれたのは音楽だ。懐かしい主題歌、テーマ曲。これは名曲です。そうそう、ダスティン・ホフマンの演技は素晴らしかった。饐えた体臭が漂ってきそうなダスティンの汚さ、病気の演技は完璧。アメリカンドリームの実相を切なく描いて現代アメリカ風俗への皮肉を込めたか、シュレジンジャー監督。

MIDNIGHT COWBOY
113分、アメリカ、1969
監督: ジョン・シュレシンジャー、製作: ジェローム・ヘルマン、原作: ジェームズ・レオ・ハーリヒー、脚本: ウォルド・ソルト、
音楽: ジョン・バリー
出演: ジョン・ヴォイトダスティン・ホフマン、シルヴィア・マイルズ、ジョン・マッギーヴァー、ブレンダ・ヴァッカロ