吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代

https://eiga.k-img.com/images/movie/91084/photo/bc0e377b1e69f378/640.jpg?1556269338

 Amazonプラムビデオではなぜか吹き替え版しか見られなかったので、日本語吹き替えで。しかしこれは意外な効果があった。ナレーションをラジオのように聞きながらほかの仕事の合間に「ながら見」が可能だったから。まあこういう見方は邪道だけどね。

 で、ここで改めて知ったことは、花の都パリ、芸術の都パリではなく、芸術の都はウィーンだったってこと。特に19世紀末に音楽、絵画、そして精神分析の都はウィーンだったということ。考えてみれば、ベートーヴェンもウィーンで作曲していたわけだし、パリに画家たちが集まる前はウィーンこそがベルエポックだったのだ。サロンがいくつもあり、カフェでは芸術的なケーキが提供されていた。

 そうだよそう、しかしわたしはウィーンに行ったことがないのが実に残念だ。この映画はクリムトエゴン・シーレの絵画を紹介・解説するだけではなく、フロイトや音楽についても物語っていく。実に素晴らしい教養番組だ。

 これで改めてわかったことは、シーレの絵画はほとんどポルノということ。男女の生殖器があからさまに描かれ、あるいは女性が自慰行為にふけっている場面がリアルに描写されている。長らくエゴン・シーレはポルノ画家とみなされていて、彼の絵は絵画市場ではなくポルノ市場で流通していたという。

 しかし単なる助兵衛画家ではなく、彼はジェンダーへの配慮を絵に込めた初めての画家だと説明されている。男の性的視線からではなく、シーレが描く女性の裸体は女性自身を主体として描いているという。それが証拠に、彼は縦長の女性裸体を多く描いた。しかし、男性学芸員たちはその絵を横長に展示したがったという。

 この映画ではフロイトも登場する。とても面白い。こういう映画は何度見てもいい。なにしろ勉強になるから。(Amazonプライムビデオ)

2018
KLIMT & SCHIELE - EROS AND PSYCHE
イタリア  Color  94分
監督:ミシェル・マリー
製作総指揮:ヴェロニカ・ボッタネッリ
脚本:アリアンナ・マレリ
撮影:マテウス・シュトレツキ
日本語版ナレーション:柄本佑