吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

グリーン・ゾーン

 というわけで、<大量破壊兵器の嘘>つながりで、「フェア・ゲーム」に続いてこの作品を取り上げます。といっても2年前に観た映画なんだよねぇ、もう忘れてしまったわ。


 あらすじは、イラクの大量破壊兵器を捜索に出向いた米兵が、作戦が間違いだったのではないかと気づいて、真実を追求しようと孤独な行動を起こそうとする、というもの。ひたすらアクション、アクションの派手な場面が続くのだけれど…。

 いつものグリーングラス監督らしく、手持ちカメラがばりばり揺れる。目が疲れる、頭が痛い、おまけになんだかあまり面白くもない…。というわけで、ほとんど寝てました。結果のわかっているお話をどんなふうに面白く見せるか、工夫したつもりなんだろうけど、響いてくるものがなかった。

 ブッシュ大統領はバカだし、軍隊は陰謀者だらけで悪いやつらばかりだけれど、そんな中にあってマット・デイモン君は良心に恥じない立派な軍人として国家的詐欺を追及した英雄です、というわけでアメリカ人の自尊心をくすぐる。て、そんなことでいいのかなあ…。なんだか割り切れない。

 この映画の何が悪いといって、まだ「歴史」になっていない生々しい話を生真面目に再現してしまったところではないか。いっそ、お笑いにしてしまえばよかったのだ。観客の記憶は新しいのだから、特別に裏話を披露するか「衝撃の真実」を暴かない限りは、中途半端な作品にならざるをえない。事実を元にする真面目な社会派作品を、娯楽である映画の世界で描こうとすると、どうしても中途半端な作品にならざるをえない。こういうのをポール・グリーングラスにやらせたのが間違いで、クエンティン・タランティーノに監督させればよかったのだ。

 まあ、マット・デイモンが真面目にかっこいいので、彼のファンなら見てよしかと。

GREEN ZONE
114分、フランス/アメリカ/スペイン/イギリス、2010
製作・監督: ポール・グリーングラス、製作: ティム・ビーヴァンほか、製作総指揮: デブラ・ヘイワード、ライザ・チェイシン、脚本: ブライアン・ヘルゲランド、撮影: バリー・アクロイド、音楽: ジョン・パウエル
出演: マット・デイモングレッグ・キニアブレンダン・グリーソンエイミー・ライアン、ハリド・アブダラ