吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

5デイズ

 今年は「3デイズ」「4デイズ」「5デイズ」という映画をこの順番に見た。それぞれまったく違う内容なのにタイトルが安易で腹立たしい。数字をつけただけの邦題って、何の工夫もないのはやめて欲しい。まあ、この3つが全部それなりに面白かった、特に「4デイズ」は必見作なので文句はないが。ただし、いずれも好きな作品かと訊かれれば否定せざるをえない。

  して、今回の「5デイズ」はいったい何の5日間なのかと言えば、グルジアとロシアの「5日間戦争」のことである。2008年8月、北京オリンピック開幕の影に隠れてこっそり行われた残虐行為を全世界に報道しようとしたジャーナリストの奮闘を描く実話。グルジア軍と政府が全面的に協力して製作されただけあって、グルジア大統領がえらくかっこいい。アンディ・ガルシアが演じた大統領はなぜか訛りのきつい英語でずっと喋っているのが違和感あるのだが、外見はけっこう本物に似ているということがラストシーンでわかって、「ほぉ」と思った。

 さすがレニー・ハーリン監督作だけあって、社会派映画もすっかりアクションものになっている。戦闘シーンではすべて本物の戦闘機が使われていて、その迫力たるや半端じゃない。製作費をかけていることがよくわかって、感動してしまう。


 おまけに主人公の若きジャーナリストが完璧にヒーローになっているので、やっぱりアメリカ映画だなぁと苦笑。これほど善悪がはっきりしているとすっきりわかりやすい。とはいえ、悪役であるロシア軍の将軍も息子を戦場で亡くしたという悲しい過去を持つとか、最後にはチラリと善良なところを見せる、といった人物造形上の工夫はある。それにしてもコサック兵の残虐無比なこと。見た目の怖さもすごいです、日本のヤクザみたい。

 この映画では個人的に2つのことが受けた。一つはスターリン広場に立つスターリンの銅像。うわ、こんなものがまだあるんだ。グルジアにはいまだにスターリン像が建っているという噂を聞いたのは30年ぐらい前かと思うが、そのときですら驚いたのに、今回、映像で確認して感動新た(笑)。

 もう一つは、結婚パーティでコサックダンスみたいな踊りが披露されるシーン。この見事なダンスはもう一度見たい。
 

 ヴァル・キルマーがすっかり太ってしまったので、いったい誰かと思った。ヴァル・キルマーミッキー・ローク化。

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5 DAYS OF WAR
113分、アメリカ、2011
監督:レニー・ハーリン、製作:ミルザ・パプナ・ダヴィタイア、レニー・ハーリンほか、製作総指揮:グレゴリー・ゲロヴァーニほか、脚本:ミッコ・アラン、音楽:トレヴァー・ラビン
出演:ルパート・フレンド、エマニュエル・シュリーキー、リチャード・コイル、ヘザー・グレアム、アンディ・ガルシア、ヴァル・キルマー