吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

散歩する惑星

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 変な映画だという評判なので、どれほど変なのかと覚悟して楽しみにしてみたら、思ったほど変ではない。これならD.リンチの「インランド・エンパイア」のほうがよほど理解に苦しむ。
 なんで「散歩する惑星」かというと、この物語の舞台がどこかの惑星の話ということらしい。しかしそんなこと、説明あったかしら? とにかく、少しずついろんな場面を切断しつつ繋ぎつつ、脈絡がないようで実はなんとなく辻褄が合っていて、いや、そうではなくてやっぱりぶつ切りの蛸を酢味噌であえてみました、ではなくて蛸はやっぱり唐揚げでしょう。という、不条理映画です。ちなみに、蛸は出てきません。

 監督が広告フィルムメーカーということなので、短時間でインパクトのある、四コマ漫画ふうシークエンスを次々つないでいく作風。わたしは昔のテレビ番組「ゲバゲバ90分」を思い出してしまった。今にも「ゲバゲバ、ピーッ!」と聞こえそうで笑えました。

 いちおう、リストラだの、保険金詐欺だの、放火だの、異議申し立てのデモ行進だの、といった社会風刺風の場面があるのだけれど、中年肥満夫婦の不気味なベッドシーンとか、夫が妻のお尻をなで回すとお尻が真っ黒に汚れてしまうという妙なシーンとか、笑えるけれどいったい何を言いたいのかわからない意味不明の場面が延々と続く。面白いのは、人々が無目的にただひたすら同じ方向に車を走らせるために大渋滞が起きるとか、前の列の人を鞭で打ちながら歩むけったいなデモ行進とか、付和雷同の大衆を冷笑するような場面。監督は一応これを社会批判のつもりで作ったのかもしれないが、それを観客に理解させるのはかなり難しそう。

 というわけで、誰にもお奨めしないケッタイな映画。

 ところで、「散歩する霊柩車」っていう映画があるんですね、初めて知りました。(レンタルDVD)

(2000)
SANGER FRAN ANDRA VANINGEN
上映時間 98分 
製作国 スウェーデン/フランス 
監督: ロイ・アンダーソン  
製作: フィリップ・ボベール  
脚本: ロイ・アンダーソン  
撮影: イストヴァン・ボルバス  
 イェスパー・クレーヴェンオース  
音楽: ベニー・アンダーソン  
字幕監修: 滝本誠  
 出演: ラース・ノルド、シュテファン・ラーソン、ルチオ・ヴチーナ、ハッセ・ソーデルホルム、トルビョーン・ファルトロム