事件が起きるまでの19分が長すぎる。あまりにも退屈なので何度も時計を確認する。これ、もうすぐアレが起きる、と知っているから我慢できるが、何も知らずに映画館へ行った観客は帰ってしまうか寝てしまうんじゃないか。
普通の日常がある日突然大いなる災厄によって破壊と滅びへと巻き込まれていくという設定だから、どうしてもその日常の一こまを描かないといけない、という意図はわかるが、それにしても描かれている若者たちに全然魅力がない上に手持ちのカメラの質が悪すぎてうんざりしてくる。
とはいえ、突然NYに大爆発が起こり、たちまち阿鼻叫喚の嵐になるあたりからはがぜん面白くなる。面白くなると同時にカメラが回って目が回る。素人が撮った動画という設定なんだけど、その割には音響だけが無駄にいいとか、そんな風にカメラを回すのは無理やろとか、いつまで撮ってるねん、などなど突っ込みどころは満載ながらも「怪獣」?の正体が見えそうで見ないところが怖い。エイリアンの子どもみたいな巨大蜘蛛も怖い。え、なんですか、これパンデミックものだったん? とか、いろいろ新たな展開があるところも怖い。
「シン・ゴジラ」が怪獣対策の作戦会議を練る政府中枢の話だったのに対して、こちらはただ逃げる以外になにもしようがない一般市民の話。まったく視点が違うこの二つ、どちらが面白いかというとゴジラのほうだ。全体像の何一つわからず、ただ災厄に巻き込まれてパニックになる、そんな普通の一市民にすぎないはずのわたしが他人事と思わずに見ていたのが「シン・ゴジラ」のほうである、というのが自分でも可笑しい。
この手の映像はアイデア勝負だから何度も使える手ではない。現に、この続編ぽい「10クローバー・フィールド・レーン」はまったく違う手法で迫ってみましたところ、そっちのほうが何倍も怖かったりする。
というわけで、一回見たら十分、という映画ではあるがそれなりに面白かったので合格点。でもなんで怪獣は東京とかニューヨークとかロサンゼルスとかにしか現れないの? 9.11のトラウマなんだろうなぁ。(レンタルDVD)
CLOVERFIELD
85分、アメリカ、2008
監督: マット・リーヴス、製作: J・J・エイブラムス、脚本: ドリュー・ゴダード、撮影: マイケル・ボンヴィレイン
出演: マイケル・スタール=デヴィッド、マイク・ヴォーゲル、オデット・ユーストマン、ジェシカ・ルーカス