吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ヒックとドラゴン 日本語吹替3D

 桃太郎の鬼退治ならぬ、鬼馴致の物語。利害が一致しないものは力づくで抑えるのではなく懐柔すればよいという、なるほど9.11以後の映画であることよ、と思う。3Dアニメの質感が、昔見たNHKテレビの人形劇を髣髴とさせてとても懐かしい。

 ストーリーはさほど珍しくもなく、少年の成長物語の王道をたどるのだが、悪者を単にやっつけようという発想をしないところが斬新といえば斬新。しかし、非暴力主義のヒックも最後はやっぱり一番の悪玉に対しては敢然と武力で立ち向かうわけだから、本質的に暴力主義であることには違いない。


 ヒックがバイキング少年であるところが、ハリウッドアニメとしては斬新である。バイキングは略奪ばかりしているのではと思ったがさにあらず、彼らの生活はドラゴンたちの略奪からわが身を守るために規律と訓練を施されている、という設定である。

 傷ついたドラゴンがいつしかヒックに馴染み、失った尾ひれの替わりにヒックが新しい尾を作ってやるという点はヒックの器用さが表れていて、「創意工夫」という言葉が思い浮かぶ。こういった知恵や工夫や手先の器用さは日本人の得意分野なのだ。日本はもっとものづくりの後継者を本気で育てないと駄目だ、となぜかこういう映画を観て思う。
 

 この夏、スタジオジブリの「借りぐらしのアリエッティ」を観たが、あの映画に致命的に欠けていた爽快な飛翔感を、「ヒックとドラゴン」では存分に堪能できる。あまりにも素晴らしい飛行なのでジェットコースター酔いするほどだ。ドリームワークスの3Dの実力をたっぷり見せてもらって大満足。わたしにはアニメというより人形劇に見えたのも、好感を持てた要因だ。アニメは二次元の平板な画質がよいのだ。フルCGになったら、いかに人形を魅力的に作るかが腕の見せ所となる。

 この映画は大画面、3Dで見ることをお奨めしたい。しかし再来週からTOHO系列では3D料金が値上げされる。許せんなぁ。

                                    • -

HOW TO TRAIN YOUR DRAGON
98分、アメリカ、2010
監督・脚本: クリス・サンダース、ディーン・デュボア、製作: ボニー・アーノルド、原作: クレシッダ・コーウェル、音楽: ジョン・パウエル
日本語吹替版声優:田谷隼田中正彦寿美菜子、岩崎ひろし、淺井孝行、宮里駿、南部雅一、村田志織