吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ブーリン家の姉妹

 この手のコスチューム・プレイは好きなので、飽きずに見ることができた。絵は美しい、ナタリー・ポートマンの演技も言うことなし、なのになぜか今ひとつ深みが足りないのはなぜだろう? 構図が決まりすぎているのだろうか? 色の配置、廊下や建物と空や緑とのコントラストなど、とても美しいのに。衣装も凝っていて、姉妹の性格の違いを反映した色遣いに苦心している。ネットで調べたら、この映画はHDデジタル撮影だそうだ。ひょっとしたらそれが一因でどこか薄っぺらいというかシャープすぎるというか、奥行きとか深みが感じられないのだろうか。

 イギリス版大奥と言われる映画だが、まさにその通り、世継ぎの誕生と実家の隆盛のために女達は利用されまた自らも権力欲に毒されていく。権欲に囚われた人々の悲劇は自業自得とも言える醜態を見せる。アンとメアリーという性格の異なった姉妹をわかりやすく描くことにより、現代人の際限ない物欲に警鐘を鳴らした作品といえるだろうが、物語が単純すぎたかも。

 ラストに後のエリザベス1世の愛らしい笑顔が映るが、このラストのまとめ方ではまるでエリザベスがこのまますんなり王位に就くかのような印象を与える。実際は彼女は長じてどこだったかの塔に幽閉されるわけだから、この映画の続きにはさらに血みどろの王位継承争いがあるのだ。(レンタルDVD)

THE OTHER BOLEYN GIRL
115分,イギリス/アメリカ,2008
監督: ジャスティン・チャドウィック、製作: アリソン・オーウェン、原作: フィリッパ・グレゴリー、脚本: ピーター・モーガン、音楽: ポール・カンテロン
出演: ナタリー・ポートマンスカーレット・ヨハンソンエリック・バナ、デヴィッド・モリッシークリスティン・スコット・トーマス