吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

恋するベーカリー

 今年の初春に見た映画が次々にDVDリリースされるようなので、お奨め作品を連続して3本紹介したい。まずは今年のマイベスト10入り間違いなしのコメディを。個人的にはめちゃ受けたので、ほとんどベスト1といっても過言ではない。



 これぞ中高年のラブコメ。これほど中高年の機微が分かる脚本はないのではないか? 笑って笑って、最後にはほろりとさせる落としどころも満点。お奨めのラブコメです。音楽もいい! サントラ欲しい。


「レッド・オクトーバーを追え」でハンサムぶりに惚れたアレック・ボールドウィンがメタボ自虐ネタで笑わせてくれるようになるとは、ショックというか笑えるというか、同い年としては複雑というか…。まぁわたしもメタボ腹になってしまったし、お互い様なのですが…。


 離婚して10年経った元夫婦が息子の卒業式をきっかけに再会し、焼けぼっくいに火が付いたから物事はややこしい。しかも元夫は今や若妻と再婚しているのだから、これって不倫じゃないの?! かつて夫を自分から奪った女から夫を奪い返して溜飲を下げ、めでたしめでたし…というほど話は単純じゃない。そんな簡単なお話を作るほどナンシー・マイヤーズは柔な監督ではありません。とにかく登場人物は皆複雑な心境で…原題は”IT'S COMPLICATED”


 ジェーンとジェイクは別れて10年。ジェイクの浮気が離婚の直接の原因だったが、ほんとうはそんなことは発端に過ぎない。彼らにとって、互いが仕事を持ち、忙しくしすぎていたのだ。離婚後はジェーンが女手一つで3人の子どもを立派に育て上げ、経営するベーカリーも順調で、彼女は豪勢な一戸建ての家に住んでいて、このたび、10年越しの願いである増築を実行に移すつもり。彼女のお気に入りになった建築家の名はアダム。彼も離婚して2年、いまだ傷が癒えない男だった。ジェーンに惚れたアダム、ジェーンに「よりを戻そう」と口説きにかかるジェイク。ジェーンの心は揺れ動き…。


 これは離婚後のカップルについて考える映画であると同時に、中高年の生き直しに際して揺れる気持ちを実に的確に捉えた作品だ。離婚経験があろうとなかろうと、この映画には「あるある」「分かる分かる」という共感・共鳴の笑いが随所に溢れている。


 とにかく役者がみんな上手い。そのうえ、キャラクターが魅力的だ。一番みっともないのがジェイクで、彼のわがままなだだっ子ぶりは苦笑してしまう。男って、こんなふうに自分勝手でお気楽なんだわ。でもそこが可愛かったりするからねぇ、困ったもんです。

 
 アメリカでは離婚がブームのように大流行しているが、当然にも「離婚後」のカップルの行方についても考えさせる材料は多いだろう。子どもがいれば、「離婚即無関係」とはいかない場合だってあるだろうし。ましてや、ジェイクとジェーンのように互いに相手に心を残しながら別れてしまった場合は複雑だ。

 
 ところで、アレック・ボールドウィンはあと2年で役者を引退するとか。もったいない。なにしろ全裸で熱演していますからね!(見たくないって?)。下ネタ満載ですが、それが気にならないという方にはぜひお奨めしたい楽しい映画。

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IT'S COMPLICATED
120分、アメリカ、2009
製作・監督・脚本: ナンシー・マイヤーズ、音楽: ハンス・ジマー、ヘイター・ペレイラ
出演: メリル・ストリープスティーヴ・マーティンアレック・ボールドウィン、ジョン・クラシンスキー