吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

マイ・インターン

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 これは女性から見た理想の男性像を描いた物語だ。主人公は70歳の退職老人・ベン。彼はシニア・インターン制度を敷いた急成長アパレル会社に採用されることとなった。妻を亡くし、一人暮らしで生きる目標もなかったベンは新しい職場に喜んで出勤する。一方、彼を採用したものの、扱いに戸惑う若き女社長ジュールズにとってベンはちょっと厄介なおじさんだった。しかし、性格がよいベンは若者だらけの職場でいつのまにか人気者になっていた。やがて社長ジュールズの信頼も得るようになったベンはジュールズの私生活にも深入りするようになっていく。

 映画全体の雰囲気はとてもいい。明るく楽しくテンポよく進んでいく。なによりもベンのキャラクターがよい。やもめの寂しさをどこかににじませながらも、明るく優しく出しゃばらず、さりげなく若者たちの相談役にもなったり。こんな素敵なシニアだらけなら、世の中どんだけ暮らしやすいんだろう。実際にはこれが違うんだよねー。特に70歳以上の団塊世代のおっちゃんたちはなんであんなに自己語りが過ぎるのか、なんであんなに自己主張が過ぎるのか、なんであんなに挑発的論争的で、なんであんなにえらそうなのか、なんであんなに「質問です」と手を挙げながら延々と自説を主張したがるのか、と非難したい人が多すぎる! これって偏見? 

 その点、ベンは実に慎ましくでしゃばらず、偉そうにしないのに若者にとてもいいタイミングでアドバイスができる。

 ちなみに、当エル・ライブラリーにも何人もシニアボランティアが働いてくださっているのだが、この映画のベンみたいな人ばかりなので、本当にありがたい。だからこそ、エル・ライブラリーのシニアボランティアのみなさんは10年以上続けていただくことができる。

 というわけで、本作はマイ・インターンではなく、われらが理想のシニア同僚の姿を描いた映画なのだ。とどのつまりは、若者だらけのこの職場で、ベンのようなシニアが存在することで一層の活性化や潤滑油的な働きができるということ。やはり職場は社会の縮図なので、各世代が気持ちよく働けることが理想だろう。そういうことを痛感させる物語であった。いくら理想像だとか現実離れだとか言われようとも、これが実現できれば素晴らしいやんか、と思わせる夢があったね。(Amazonプライムビデオ)

 2015
THE INTERN
アメリカ Color 121分
監督:ナンシー・マイヤーズ
製作:ナンシー・マイヤーズスザンヌ・ファーウェル
脚本:ナンシー・マイヤーズ
撮影:スティーヴン・ゴールドブラット
音楽:セオドア・シャピロ
出演:ロバート・デ・ニーロアン・ハサウェイレネ・ルッソ、アンダーズ・ホーム、アンドリュー・ラネルズ