吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ストレイドッグス~家なき子供たち~

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 アフガニスタンの戦火の傷跡を子どもの視点から描いた作品。そこはかとないユーモアも漂うけれど、目を覆いたくなる悲惨な状況が描かれている暗い映画だけに、劇場未公開もやむなしか。イラン映画だが舞台はアフガニスタンなので、監督はアフガンの状況を描きながらイランの現体制への批判を忍ばせているといえよう。

 

 幼い兄妹はゴミ拾いをして生活している。父母は別々に刑務所に収監されていて、子どもたちは夜だけ「囚人」になって母の寝床で眠る。この国の子ども達の貧しさはインドの貧困街やフィリピンのストリートチルドレンを思い出させる。母の罪は「重婚」だ。夫が戦死したためやむなく別の男と再婚したところ、実は夫は生きていたので重婚罪に問われた。イスラム教理による裁判のこの不条理。

 巻頭、子どもたちが犬を焼き殺そうと追いかけまわす姿が印象的。戦火に育った子ども達は残虐な殺戮を厭わない。彼らはアメリカやロシアやイギリスを罵りながら犬を代わりに殺そうとする。彼らは一様に貧しく、様々な手段でかろうじて生きながらえている。生活力旺盛といえばいえなくもないが、その救いがたい状況には絶望という言葉が貼り付いている。

 妹役の子役が目ぢからを発している。その頑固そうな硬く張り詰めた表情には、アフガンの未来がどのように映るのだろう。この国の立ち直りはまだまだ遠い。

stray dogs

93分、2004年, イラン

監督:マルズィエ・メシュキニ、音楽:モハメド・レザ・ダルヴィシュ

出演:ゴル・ゴディ、ザヘド、アガレ・レザイ