二ヶ月前に午前十時の映画祭で見たのに、感想をアップするのを忘れていた。大きなスクリーンの劇場が満席で、すごい人気ぶりに改めて感じ入ったものだ。
オーストリア・アルプスを空撮で鳥瞰しながら緑の山肌を舐めるカメラがずずっと寄ると、ジュリー・アンドリュースのアップへと繋がる巻頭の雄大なシーンを見逃したりしたら、なんのためにこの映画を大スクリーンで見ているのかわからない。そんなもったいないことをしているカップルがいた。この映画、上映開始に絶対遅れてはいけません。ポップコーンとドリンクを買っている暇があったらすぐに座席に着きましょう。この場面はシームレスに編集したいところなのだろうけれど、それは無理というもので、どうしても「繋いでいる」ということが分かってしまう。でも今ならCGを使ってシームレスに撮影できるのではないのか。この映画が製作されたときはこの巻頭のシーンにみなさぞや驚いたことだろう。ここだけでももう一度スクリーンで見たい。
今回の上映はデジタルリマスター版で、実に美しく映像も音も蘇っている。この映画の見所はなんといっても美しい山並の風景と聞きなれた楽曲。本作を大昔に見たときはジュリー・アンドリュースがおばさんにしか見えなかったというのに、今見ると随分若くてかわいらしい人ではないか。つくづく自分が歳をとったことを痛感する。
物語は戦火が近づく1930年後半のオーストリアを舞台に、子どもが7人もいるトラップ大佐一家に家庭教師にやってきた修道尼マリアとトラップ一家の交流を描く。トラップ一家は実在の家族で、この物語の原作はマリアのモデルとなった尼僧が戦後、アメリカに渡って書いた手記に拠っている。
国難にあっては人々の心を安らげ故郷への愛情を謳いあげる楽曲が大きな感動を与えてくれる。大佐がエーデルワイスを歌うシーンでは涙が出そうだった。日本でも今、「上を向いて歩こう」や「見上げてごらん夜の星を」が震災復興歌としてCMに流れているように、今「エーデルワイス」は胸に染み入る。こういう素直な気持ち(と自分では思っている)ものがNationalなものに掬い取られないためにも、素直な感動は素直に放出すべきではなかろうか。
上映後、客席の何人かが拍手をしていた。その気持ち、わかる。わたしも上映中、子どもたちとマリアがドレミの歌を高らかに歌い終わった瞬間、思わず拍手しそうになったし。心を大きく高揚させる映画だ。歌あり、笑いあり、恋あり、スリルあり。老若男女を問わず誰もが楽しめるミュージカルの古典。いやあ、名作です。
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THE SOUND OF MUSIC
174分、アメリカ、1964
製作・監督: ロバート・ワイズ、原作: ハワード・リンゼイ、ラッセル・クローズ、脚本: アーネスト・レーマン、撮影: テッド・マッコード、音楽: リチャード・ロジャース、オスカー・ハマースタイン二世、アーウィン・コスタル
出演: ジュリー・アンドリュース、クリストファー・プラマー、エリノア・パーカー