Xメンの前日譚。いかにしてXメン=ウルヴァリンが誕生したのかがわかる。一回目は寝落ちしたので、再度DVDを見直してみて、なかなか面白いということに気付いた。シリーズ本編よりも面白いのではないか。無常感が漂う、かなり大人のテイストになっているからだろう。
ウルヴァリンの誕生は19世紀に遡る。彼は裕福な家の病弱な次男として子ども時代を過ごしていたようだ。ある日、衝動に任せて実父を殺してしまったひ弱な少年ジェームズが、実は並外れた能力を持つ人間であったことが分かる。そこから彼は、兄ビクターと共に「ミュータント」として生きることを選択する。ミュータントの兄弟はやがて成長して南北戦争に従軍し、第一次世界大戦で塹壕戦を戦い、第2次世界大戦ではノルマンディー上陸作戦に参戦し、ベトナム戦争にも加わる。各地の戦争で兄ビクターは殺戮の快感に酔いしれ、その残虐さを止めようとするのはいつも弟ジェームズの役目だった。
ベトナム戦争で上官を殺害したために二人は銃殺刑となるが、ミュータントの彼らは銃なんかでは死なないのである。彼らの特殊能力を買った人物がここで登場する。ミュータントによる特殊部隊を編成しようとたくらむ将校ストライカーこそがその人物である。
ストライカーの作戦に賛同しがたいジェームズは彼のもとを飛び出し、カナダの山奥で木材伐採人として平和に生きていた。ケイラという美しい女性と共に。だがそのケイラをビクターに殺害され、復讐の鬼と化したジェームズ・ローガンは、「ウルヴァリン」として生まれ変わる。。。。。
全体に暗い雰囲気がただよい、同じミュータント兄弟とはいえ、ビクターとローガン(ジェームズ)の違いが鮮明になり、やがては血で血を洗う争いになっていくところがさらにダークな味わいを深める。愛する女性を殺されたり、さまざまにつらい別れがあって、ラストの切なさも一級品だ。ミュータントたちが次々に登場してくる場面が、やがてXメン本編につながるというのがよくわかって大変面白い。
一方でアクションシーンが若干単調だったり、超能力の面白さがそれほど生かされていなかったりという短所もある。何よりもユーモアがほとんどないのが、これまでのシリーズとは異なる点か。好みがわかれるところだけれど、わたしはダークで物悲しいこの映画が気に入った。続編も見ようっと。(レンタルDVD)
※続編はつまらなかったので、感想は書かない。
X-MEN ORIGINS: WOLVERINE
108分、アメリカ、2009
監督: ギャヴィン・フッド、脚本: デヴィッド・ベニオフ、スキップ・ウッズ、撮影: ドナルド・M・マカルパイン、音楽: ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
出演: ヒュー・ジャックマン、リーヴ・シュレイバー、リン・コリンズ、ダニー・ヒューストン、テイラー・キッチュ、ライアン・レイノルズ、ウィル・アイ・アム