吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

ブリューゲルの動く絵

 ブリューゲルの絵は好きだ。自室の机の前にはshohoji(http://d.hatena.ne.jp/shohoji/)さんから貰った「反逆天使の墜落」のポスター画を貼っている。とても16世紀の絵とは思えない、アニメの原画のような楽しさに溢れた作品ばかり。宮崎駿の絵に似ていると常々思っていたら、実際、宮崎駿が最新短編アニメの素材にブリューゲルの作品を使ったというから、納得。


 ブリューゲルの絵の中に入っていったら、どうなるだろう。その発想は斬新で素晴らしい。絵の中の人物を映画で描いていけばどうなるだろう。そのアイデアだけで映画を作ってしまいました。

 絵の中の人物なんだから、当然にも彼らには台詞がない。絵を描いているブリューゲルには台詞がある。しかし、描かれている寓話や聖書の物語を知らないとちんぷんかんぷんである。それでも、最初のうちは画の美しさに惹かれ、俳優達が奇跡のように静止ポーズを決めている様子に心を打たれて感動しながら見ていた。が、やはり段々と退屈し始め、危惧したとおり、途中で眠りこけてしまった。

 巻頭の粉引き小屋の朝の風景は素晴らしく、16世紀の庶民の生活に分け入った描写に心を掴まれる。台詞もなく淡々と目覚めて淡々と仕事に就く人々の様子を、劇場中に響く効果音で表した場面には絶句するほど。木靴の音が響く大きな小屋(山?)には異次元に迷い込んだような錯覚を覚えた。

 しかし、この驚きと耽美の世界が長続きしないのが難点。取り上げられている絵が「十字架を担うキリスト」という時点で、キリスト教徒でない人間にはかなりの知識を要求されるので、受容側の感受性や教養が試される映画だ。これが「反逆天使の墜落」だったらもう少し面白い(ストーリー性のある)ものになったのではなかろうか。

THE MILL & THE CROSS
96分、ポーランド/スウェーデン、2011
製作・監督・脚本・撮影・音楽: レフ・マイェフスキ、脚本: マイケル・フランシス・ギブソン、音楽: ヨゼフ・スカルツェク
出演: ルトガー・ハウアーシャーロット・ランプリングマイケル・ヨーク