吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

ゾンビランド

 全米歴代ナンバー1ヒットのゾンビ映画という惹句とパープルローズさんの「めっちゃ面白い」という言葉にそそのかされて鑑賞。でも、いくら平日の朝だからって、観客はわずか5人。あんまりでしょ〜。しかも、その次に上映する「瞳の奥の秘密」(満席)を待っている観客が出入り口にずらりと並んでいて、たくさんの注視する目に見つめられながら劇場から出ないといけないなんて、「なんだ、あんな映画を見る人がいるんだ」みたいな視線に耐えながら会場を出て、なんとその次の「瞳の奥」の整理券番号は1番なんだな、わたしは。この組み合わせで見てたのはわたし一人かも。
 ホラー映画は苦手でゾンビなんて大嫌いなわたしでも、この映画は笑える部分が多くて、スピーディな演出が好印象。主人公の引きこもりオタク大学生の独白で進む物語はホラー、コメディ、青春恋愛もの、アクション、バイオレンス、サスペンス、すべての要素をてんこ盛りにしたなかなか満腹感の大きい映画。


 「コロンバス」と町の名前で呼ばれる大学生は、ゾンビだらけになってしまった世界で生き延びるために自分にルールを課している。「シートベルトを締める」「準備運動」「有酸素運動」「トイレに用心」などとふざけたルールだが、実生活で役に立ちそうなチマチマとした教訓に満ちていて含蓄深い(ほんまか(~o~))。臆病で用心深いことが奏功して、人類絶滅の危機にも生き延びたコロンバスだった。彼は故郷へ向かう旅の途中でマッチョ男「タラハシー」と出会い、その壮絶なゾンビ殺しの腕に圧倒される。男二人のロードムービーに加わるのは美しい姉妹。ところがこの姉妹がまた食わせ物で、彼女たちは詐欺師なのだ。男女4人はゾンビがいないという噂の「パシフィックランド」を目指してロサンゼルスに向かうことになる。果たして4人の旅は?

 ゾンビ映画だから、当然にも肉片が飛び散り内臓が噴出し、人肉を貪り食うゾンビのおぞましい姿が映る。こういう場面は苦手なのでなるべく眼を背けていることにして、でも必死の形相で逃げる人間たちをスローモーションで映す編集はけっこう笑える。恐怖というのは当人たちにとっては死活問題だが、観客として見ている分にはどこか滑稽さが漂う。これは恐怖の本質のある面を的確に描いていると言えよう。

 
 わたしの後ろの席の若いカップルのうち、男性のほうがやたらよく笑っていたのが印象的。あれだけ喜んで観たなら、十分元は取ったね。特に笑えるのはビル・マーレイが本人役で登場する場面。ビル・マーレイの豪邸という設定でロケしたのはビバリーヒルズではなくジョージア州だという。ここはビル・マーレイの芸達者ぶりと自虐ネタで笑わせてもらいましょう。


 そして最後のクライマックスは「パシフィックランド」でのゾンビとの対決。夜の遊園地のアトラクションを舞台にゾンビの襲撃をかわしていくのはものすごくスリルがあり、夜景に浮き出る電飾も美しく、かつ爽快感も爆発。タラハシー役のウディ・ハレルソンは適役だ、ものすごく気持ちよくゾンビを撃ちてし止まむ。


 世紀末の恐怖をそそるだけではなく、引きこもり青年の成長ぶりや、人を信じない孤独な者たちがいつしか心を開いていくという展開など、ゾンビ映画のくせに感動的で、事態は絶望的なのに希望があるかのように思えてくるというのもなかなかによろしい。過去のさまざまな映画ネタが随所に出てくるのも映画ファンを喜ばせる。そういえば、登場人物が町の名前で呼ばれる映画がありましたね、アレン・レネの「二十四時間の情事」(ヒロシマ・モナムール)。あの作品と比べるのもおこがましいが、発想の根本が似ている。



 ところで、タラハシーが執着していた「トゥインキー」なるお菓子、あれは何? 大の男が必死になって捜しまくるほど美味しいものなのだろうか。堂島ロールの類か。

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ZOMBIELAND
87分、アメリカ、2009
監督: ルーベン・フライシャー、製作: ギャヴィン・ポローン、製作総指揮: ライアン・カヴァナーほか、脚本: レット・リース、ポール・ワーニック、音楽: デヴィッド・サーディ
出演: ウディ・ハレルソンジェシー・アイゼンバーグアビゲイル・ブレスリンエマ・ストーンビル・マーレイ