吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

そして、私たちは愛に帰る

 トルコとドイツとをトランスする移民の物語だが、そのテーマよりもわたしは父と子、母と娘の葛藤のほうにそそられた。トルコ人1世の父を「無学で下品な老人」として蔑視している息子は大学教授。保守的な母に反抗的なのはレズの娘。彼らがどのようにその葛藤を乗り越えて「愛に帰る」のか、その過程が興味深くまた、悲劇を伴いながらもしみじみとした味わいがあった。


 脚本はよく練られていて巧みだが、話を作りすぎているところが嘘っぽくてこの物語にのめり込んでいけないものを感じさせる。嘘でもなんでも力業でぐいぐい引き込む映画もあるけれど、これはそうではなかった。登場人物に魅力が足りないからか? 特にロッテとアイテンという重要な若手女優二人がちっとも魅力的じゃないので、見ていてしんどくなってくる。
 「君の名は」ばりのすれ違い(本屋の掲示板に貼られた尋ね人のポスター)なんてなかなかのものだけれど、これとて観客の気を惹くためだけに挿入した場面だとしたらちょっとね。

 
 大事な登場人物があまりにもあっけなく死ぬのがこの映画の特徴で、人の死などはそのように予期せぬあっけないものだと言いたいのだろうか。運命に翻弄される人間の存在の小ささ、どうしようもない絶望を描いているとも言える。だから、先の尋ね人のポスターのすれ違いにしても、これとて人の運命というものを象徴していると見ることができる。


 釣りに出た父の帰りを海辺でじっと待つラストシーンがとてもよかったので、ここで評価がアップ。(レンタルDVD)

AUF DER ANDEREN SEITE
122分、ドイツ/トルコ、2007
監督・脚本: ファティ・アキン、音楽: シャンテル
出演: バーキ・ダヴラク、トゥンジェル・クルティズ、ヌルギュル・イェシルチャイ、ハンナ・シグラ、ヌルセル・キョセ、パトリシア・ジオクロースカ