暴力に逆らって書く: 大江健三郎往復書簡
大江 健三郎著 : 朝日新聞社 : 2003.5
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11人の人々との往復書簡はドイツの作家ギュター・グラスに始まり、アメリカの反核運動家ジョナサン・シェルで終わる。のべ5年にわたる往復なので、その間に話題になったことはNATOのユーゴ空爆、アメリカのアフガン攻撃から9.11のテロへとシフトしていくが、基本的な話題は一つ。
いかにこの戦争と暴力が蔓延する世界を変えていくのか、作家/知識人の役割は何か、ということ。
大江健三郎との対談相手が11人、とけっこう多いので、10人目くらいから飽きてきてしまうのが難点だが、これを読んで対談相手の作品をムラムラと読みたくなった。書簡の中で大江健三郎の小説がいくつも引用されているあたりはファンには嬉しいのだが、大江ファンならずとも、興味引かれるのではないだろうか。
もう少し論争的な内容ならばもっと血沸き肉踊る本になったのだろうが、これは「バトル」というような下品なものではなく、もっと上品で慎ましやかな対談集である。互いに文通相手に対する敬意が溢れ過ぎているため、あまりにも共感しあう部分が多く、やや物足りない。ここが読者によっては評価の分かれ目となりそうだ。
本書の中ではスーザン・ソンタグが最も過激な口調でかなり辛らつなことを大江に言っている。ソンタグはコソボへのNATOの空爆を支持したが、これについては様々な批判が噴出した。大江への書簡の中で彼女はこの件についてふれているが、それに関しては内田樹が『ためらいの倫理学』の中で厳しく批判しているので、参考にしてほしい。(bk1投稿書評)