吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2030年ごろかも。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

今宵、フィッツジェラルド劇場で


 こんなに楽しい作品を遺してくれたアルトマンに感謝。即興的な演出と軽やかなカメラワークが楽しい逸品です。最初のうちこそしゃべくりすぎでちょっとしんどかったけど、途中からはぐっとのめり込みました。

 今夜が最後の公開録音日となったフィッツジェラルド劇場では、オンエア前の慌しい雰囲気が満ちていた。もう30年以上もカントリーやフォークを流し続け、ライブ演奏を公開で流し続けてきたこの番組も今夜が最後なのだ。というのも、ラジオ局が大手資本に買収され、経営者が番組の終了を決めてしまったからだ。今夜は買収した企業の社長もやってきて最後の公開放送をVIP席から見ている。

 この番組、何しろ30年とか50年とか続けているらしいので、この物語の時代がいつなのかがさっぱりわからない。現代劇のはずなのに雰囲気がやたらレトロで、わたしはすっかり1930年代だと騙されていた。まあ、考えてみれば1930年代に30年以上続いているラジオ放送なんてないわな。

 饒舌で歌も上手い名司会者の名はギャリソン・キーラー。ご本人が本人役で演じてます。キーラーは今日で番組が終わるということをどうしてもリスナーに告げることができない。今夜も明日もずっと番組が続くかのようなことをしゃべり続ける、その気持ちが切ない。映画はアルトマン監督らしく、群像劇だ。登場人物たちそれぞれがとても魅力的。年老いた恋人たちのいちゃいちゃする様子も微笑ましいし、中高年姉妹デュオというぱっとしないカントリー歌手もいいし(メリル・ストリープって歌も歌えたのね、すごい)、カウボーイたちの下品な歌も大笑い。ガイ・ノワールと言う名前のダンディな探偵(ケヴィン・クライン、かっこいい)が場違いに一人フィルム・ノワールの雰囲気を出しているところも笑える。そして、謎の美女が白いコートで現れるところなんて、ゾクゾクします。さてこの美女の正体は?! なんとも遊び心に満ちた映画ですねぇ。

 番組が終わるというときに様々な悲喜劇が描かれ、金にものを言わせる経営者への批判がチクリと描かれ、最後は新たな旅立ちへと。いいです、音楽も楽しくって。お奨め!


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今宵、フィッツジェラルド劇場で
A PRAIRIE HOME COMPANION
上映時間 105分(アメリカ、2006年)
監督: ロバート・アルトマン、脚本: ギャリソン・キーラー
出演: ウディ・ハレルソントミー・リー・ジョーンズ、ギャリソン・キーラー、ケヴィン・クラインリンジー・ローハンヴァージニア・マドセン、ジョン・C・ライリー、メリル・ストリープ