この本はマイケル・ムーアの『アホでマヌケなアメリカ白人』にノリが似ている。ムーアの本よりずっと笑えるけど。
アメリカ社会の下品さとか懐の深さとか、笑っているうちにいろいろと考えさせられた。ただまあ、文体もけっこう下品だったりするので、こんなんでええんかいとか思うけど、おもしろいからえっか。
映画評論家だけあって、やはりハリウッドの裏事情などを書いてある部分がおもしろいのだ。映画ファンなら、そういうあたりにアンテナが反応するだろう。日本の芸能人は主義主張や政治思想・宗教をあまり明らかにしないが、ハリウッドのスターたちは積極的に政党のパーティに参加したり献金したりするのだ。誰が共和党支持者か、なんていうのがわかってけっこうおもしろい。
まあ、社会分析の本というよりは、おもしろおかしく読みつつも、アメリカ社会への批判の目を養う、といったところか。でも『あの日から世界が変わった』のたけちよさんもそうだけど、アメリカが好きだから批判する。アメリカへの愛が感じられるのだ、やっぱりこの本も。
<書誌情報>
底抜け合衆国 : アメリカが最もバカだった4年間 / 町山智浩著 洋泉社, 2004
次に、『現代アメリカ政治思想の大研究』。わたしが読んだのは1998年刊の新装版だが、現在では左の写真のような文庫になっている。もともとが1995年出版の本だから、もう10年経ってしまっているが、内容がそれほど古いとは思えないから、アメリカ政治の基本構造は変わってないのだろう。
こちらの本は参考文献やニュースソースがいっさい明記されておらず、引用文献についてさえほとんど明らかにされていないという杜撰な本で、知識人論をはじめたいへん雑駁な論があちこちで展開されているので、どこまで信用していいのか怪しいのだが、そうはいえどもアメリカの政治思想について整理するには実にわかりやすくて役に立った。ニュースで名前を聞いたり読んだりするだけの人物たちの人脈や思想性がよくわかる。そのわかりやすさはチャート式の受験参考書を読んでいるようなかんじ。ま、内容もその程度のもんかな、と思う。
しばしば著者の政治思想や信条を吐露する余計な部分が出すぎるのも難点だし、山本宣治と鈴木文治を同列に扱うなどかなり雑だし、ウォーラステインの世界システム論を「よくわからない」の一言で終わらせてほとんど説明しないとか、なんだか「あれれ?! をいをい!」という部分が多い。
だが、二大政党といっても民主党も共和党もさして変わらないというわたしの印象を裏付ける論述や、いっぽうで同じ党内でもさまざまな主張が対立している様子や、党派入り乱れての論戦・離合集散があることなど、いろいろおもしろい記述もあった。
総じて、アメリカ政治を見るときの参考にはなるけど信じ込まないほうがよさそうな本。でもそれなりにおもしろかったから、いちおうお奨めね。わたしは読みながら腹が立ってしょうがないところが何箇所もあったけど。
では本書から少しおさらいを。現代アメリカの政治思想は大きくわけてリベラル派と保守派がいるのだが、さらにその中でいくつかに分かれている。
保守派の中は5つにわかれていて、
1.保守本流
2.リバータリアン(徹底した個人主義)
3.ジョン・バーチ協会派(直情極右)
4.旧保守派
5.ハイエク主義者、レオ・シュトラウス派(「小さな政府」派)
このうち、最近台頭してきているリバータリアンの思想というのが興味を惹いた。リバータリアンは徹底した個人主義を貫く保守思想で、その特長を20項目挙げてあるが、簡単にいえば、リバータリアンは国家を否定し一切の権力の介入をきらい、税金を払わないかわりに総て自助努力でしようという連中のことだ。外交的には、外国へでかけていって軍事力で他国を救う必要はない、アメリカ国内のことだけやっていればいいという「反戦派」。
これは税金を払いたくない中小自営業者の思想なのだという。
<書誌情報>
現代アメリカ政治思想の大研究 : 「世界覇権国」を動かす政治家と知識人たち / 副島隆彦著 ; 新装版. -- 筑摩書房, 1998