吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2030年ごろかも。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

冷血


 1959年にカンザス州で起きた一家4人惨殺事件を描くドラマ。ほぼカポーティの原作ノンフィクション小説の筋書き通りに進むドラマ展開には新鮮味がなく、やや退屈。また人物のイメージがわたしの想像とは違っていたので違和感も覚えた。原作が長いだけに、犯人若者二人の生い立ちをはしょってしまったのは残念だ。カポーティの原作ではとりわけペリー・スミスの生い立ちにかなりの紙幅を割いていただけに、そこをカットしてしまうと、この犯罪の背景が見えない。貧しさゆえに犯罪に走る者たちの苦しみがさらりと描かれてしまい、とりわけペリー・スミスの母親がチェロキー族出身であったことなど、彼の性格に大きな影を落とした部分を映画ではさらりと触れただけなのが残念だ。原作未読者にとってはこの程度の描写で充分と思われるかもしれないが、わたしにとっては原作のイメージが強いだけに物足りなさを感じる。あとは、被害者一家の説明がほとんどない点も不満が残る。

 ただ、特筆すべき点もある。ラスト、犯人たちが死刑になる場面、ガラス窓に叩きつけるように降る雨のしずくがペリー・スミスの顔に影を作る不気味さはモノクロ映像ならではの効果だ。犯人達の逃避行から死刑まで一気に見せる演出はよかったし、緊張感があり、この部分はぐっと画面にのめりこんでいく。この映画は原作を読んでいない人のほうが面白く見られるのではなかろうか。(レンタルDVD)


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IN COLD BLOOD
アメリカ、1967年、上映時間 133分
監督・脚本: リチャード・ブルックス、原作: トルーマン・カポーティ、音楽: クインシー・ジョーンズ
出演: ロバート・ブレイクスコット・ウィルソン、ジョン・フォーサイス、ポール・スチュワート、ジェフ・コーリイ