吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2030年ごろかも。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

カンバセーションズ ~終わらせた恋のはじめ方~


 別れた元夫婦が知人の結婚式で十数年ぶりに再会し、ベッドイン。彼女が飛行機に乗るまでの一晩の元カップルの会話だけで成り立たせた映画。

 画面を二つに分割し、一つの場面を二つの角度から映したり、またときには二人の出会いのころの若々しい姿が映し出されたりする。画面を二分割する映画じたいはそう珍しくはないが、最初から最後まで分割したのは見たことがないので、なかなか面白い演出だと思う。画面の二分割は再会した二人の心の距離や、取り戻せない過去への切ない思いを表すのにうまい表現法だ。

 かなりの低予算映画と思える会話劇で、予告編のイメージと違ってスピード感がない。どちらかというと、中年になった元カップルのだらだらした会話劇という印象のほうが強い。こういう微妙な会話を理解できるためにはそれなりの人生経験が必要だ。男は元妻に未練たらたらで、女のほうがクール。それは、男がいまだに独身で、恋人はいるけれどそれほど本気じゃなく、女のほうは既に再婚して家庭があるという事情がそうさせているのだ。

 互いに過去を語り合い、今の恋人のことを語り、心を探りあうその会話はリアルだけれど、そもそも二人がなぜ昔別れたのかそれが最後までよくわからないから、やり直せるのかどうかというスリルがいまいち盛り上がらない。ただ、「終わった恋」への心の残し方が男と女の今の感情に異なる影を落とすことはよくわかる。

 二度と戻らない青春時代、過ぎ去った時間は残酷で、今の二人はもうかつての同じ二人ではない。では違う二人だからこそやり直せるのか? それは一夜に見た夢か幻。

 わたしなら、昔の恋人と再会してベッドインなんていうことは絶対に起きない、と思いながら見たけれど、この二人がそうなるのは結局のところ今の愛に満足していないからだろう。

 最後の最後に二分割の画面が一つになる。そのときこそ、二人の本当の別れが来るというのも皮肉だ。ラストシーンが心憎い。(レンタルDVD)

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CONVERSATIONS WITH OTHER WOMEN
アメリカ/イギリス、2005年、上映時間 84分
監督: ハンス・カノーザ、製作: ラム・バーグマンほか、脚本: ガブリエル・ゼヴィン
出演: ヘレナ・ボナム=カーター、アーロン・エッカート