吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2030年ごろかも。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

愛されるために、ここにいる


 もうすぐ51歳になるという主人公ジャン=クロードを演じたパトリック・シェネが老けていて、50歳よりずっと上に見えるのだが、じっさい彼はこの映画に出演していたとき58歳だったそうだ。

 バツイチの独り身で行政執行官という仕事に疲れた男が、老人ホームにいる頑固で我が儘な父親の扱いにも疲れている様子が痛々しい。。だから彼が運動不足解消のために始めたタンゴダンス教室で出会った若い女性に仄かな想いを寄せ、おずおずと惹かれあう姿がとても好ましかった。

 ものすごく静かで大きな山場もなく淡々とすぎていく時間の流れには退屈さすら感じてしまうけれど、シャイな男の気持ちが手に取るように伝わって、中年過ぎの恋とはこのようなためらいとともにあるのだろうなと思わせる。

 ダンス教室で踊る不器用な男の姿はまるで「Shall Weダンス?」ではないか。でも踊っているタンゴがあまりにもスローで、「レッスン!」のエロティックでスピード感溢れるタンゴとなんという違い! 同じタンゴ映画なのに踊りのレベルがかなり異なる。

 中年の恋というテーマに加えて、老父と息子、そのまた息子という三代に亘る葛藤が大きなテーマになっていて、最近のフランス映画でもこういうのが大きなテーマたりえるのだな、と興味深い。最近のアメリカ映画には父子の葛藤と和解を描くものが増えてきたような気がするが、フランス映画でもそうなのだろうか。

 とっても地味な映画だけれど、静かな味わいと余韻を楽しみたい方にはお奨めします。まあ、若い人には無理かも。(レンタルDVD)

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JE NE SUIS PAS LA POUR ETRE AIME
フランス、2005年、上映時間 93分
監督: ステファン・ブリゼ、製作: ミレーナ・ポワロ、ジル・サクト、脚本: ステファン・ブリゼジュリエット・サレ、音楽: エドゥアルド・マカロフ、クリストフ・H・ミュラー
出演: パトリック・シェネ、アン・コンシニュイ、ジョルジュ・ウィルソン、リオネル・アブランスキー、シリル・クートン