吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2030年ごろかも。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ビー・ムービー


 我が家の裏庭にはしょっちゅ蜂が飛んでいる。S次郎が小学生のとき、刺されて病院へ行ったこともある。あまりによく飛んでくるからどこかに巣があるのかと思って探したら、ウッドデッキの上に置いてある木製テーブルの裏側にあった、なんていうことも。ウッドデッキの床板の裏側に巣を作られたこともあるし、驚くべきことにエアコンの室外機の中が巣になっていたこともあった。

 蜂というのは生命力が強いものらしい。追っ払っても巣をいくら潰してもまたいつの間にかやってくる。しかし、まだ足長蜂とか密蜂ならいいけれど(いえ、彼らに刺されても十分痛い。経験者は語る)、なんといっても怖いのはスズメバチ。これが出てくると固まります(大汗)。わたしなんて、ガーデンニングしていてスズメバチがやってきたら、絶対に動かないことにしている。しかし、スズメバチは山に出没するものであって、なんで町中に出てくるのかわからない。今年初めて一匹だけスズメバチを庭で見つけたときにはびっくりしたが、これは地球温暖化と関係あるのだろうか? いや、あれはスズメバチではなかったと自身の誤認を信じたい(というのは妙な日本語である)。



 それはともかく。

 この映画、えらく説教くさいからてっきりディズニー作品だと思ったら、ドリーム・ワークスだった。「シュレック」のような毒に欠けるが、その一方でディスニーをコケにすることを相変わらず忘れない。何より、役者や歌手が本人役で登場してかなりエキセントリックな役を演じる(声優で)というのが驚きだ。

 主人公は大学を出たばかりのバリーという働き蜂。ここは、高度にシステマティックな蜂の世界で、大学を出た蜂たちは必ずどこかの部署に就職せねばならず、しかも一度決めた仕事は一生同じ事をし続けなければならない。そんなことはイヤだ、外の世界を見てみたいよぉ~という甘えたことを考えたモラトリアム人間、いや、モラトリアム蜂のバリーは単身、外の世界つまり人間界へとやってきた。人間の言葉をしゃべれる蜂であるバリーは自分の命を救ってくれたやさしい女性ヴァネッサにタブーを破ってついつい話しかけてしまう。ここからは蜂と人間との心暖まる交流が始まり、その一方でミツバチの密を搾取する食品会社を訴える法廷ものへと様変わりして… という、けっこうめまぐるしいお話。途中、かなりディズニーのアトラクションっぽい場面が登場したり、スピードあふれるジェットコースタームービーは子ども向けに楽しい。

 だが、最後まで見ると、これは子ども向けというよりは若者向けの説教話であったことに気づく。ニートだフリーターだのと辛い日々を送る若者を叱咤激励する…いや、待てよ、そうではなくて、どんなにつまらなく思える仕事でも、それは社会にとってはなくてはならないものであり、必ず誰かがその仕事をしなければ社会は機能しないのだというイデオロギーを注入することによって、近代分業社会の厳しい労働への適応を諭す資本家的発想映画か。いや、そうではなくてこれはいつの時代でも必要な…などとあれこれ悩んでしまったわたしってバカじゃなかろか(^_^;)。

 本作は、意図と結果が解離する皮肉を描いて、「正義がいつでも正しい」とは限らないことを指摘した点はなかなか深いものをもっている。最後は環境問題に落ち着かせた点でも現代的。子ども向けアニメと侮るまじ。(レンタルDVD)

----------------
ビー・ムービー
BEE MOVIE
アメリカ、2007年、上映時間 90分
監督: スティーヴ・ヒックナー、サイモン・J・スミス、製作: ジェリー・サインフェルド、クリスティーナ・スタインバーグ、脚本: ジェリー・サインフェルドほか、音楽: ルパート・グレグソン=ウィリアムズ
声の出演: ジェリー・サインフェルドレネー・ゼルウィガーマシュー・ブロデリックジョン・グッドマンクリス・ロック、パトリック・ウォーバートン、キャシー・ベイツレイ・リオッタ、スティング