
恋愛映画はこうでなくちゃ!というようなうまい作りの展開。定石通りの切なさやほろ苦さが期待通りの配置で漂ってくる。いったいこのW不倫の二人はどうなるのだろう? ハッピーエンドというのは要するに二つの家庭が壊れることを意味するのであり、そんなことを望むのが「正しい」のだろうか? などとあれやこれや思いつつ、やっぱりこういう結末でくるか、ハリウッドは! と納得したのかしないのかよくわからないラストシーンに「うーん」。
名優二人の演技は盤石で、何もケチをつけるところはない。演出は実にかっちりとしており奇をてらわない。脚本はおしゃれな科白や心憎いすれ違いを描いてこちらのツボにハマるうまさがある。二人の出会いが書店というのも知的で上品な感じがしていい。
しかしねぇ。今ではもうこういう恋愛の機微はほとんど失われてしまったのではないだろうか。この映画では携帯電話がないから連絡不行き届きのすれ違いが起きるし、電子メールもできないから簡単に心を通じ合わせることもできない。そのかわり切なさや苛立ちが募って相手に対する思慕はいっそう強くなる。今の時代はネットやメールで簡単に意思疎通できてしまうように思うけれど、かえってそれがアダになることもある。ネットの上の軽いおしゃべりが誤解を生んだり疑心暗鬼を生んだり、いっぽうで顔を見ないメールのやりとりで些細な言葉に傷ついたり傷つけたり…
20年前の恋愛は、やっぱり20年前の恋愛だ。今に通じる切なさや厳しさもあるけれど、やはりちょっと違う、と思ってしまう。禁欲的な不倫物語だけにいっそう切なさが募って主人公たちに同情的になるけれど、別の世界の出来事に見える。
今の時代の恋人達はもっと辛いかもしれない。もっと互いを苦しめ合っているかもしれない。すぐにメールのやりとりができるかわりに、「メールを送らない」「なにも書かない」という沈黙によって相手を傷つけたり威圧することもできる。たとえそれがどちらがどちらを傷つけたにせよ、結果的にはお互いが傷つく。コミュニケーションのスピードが速いだけに、衝撃も大きいかもしれない。どうなんだろうか…(レンタルDVD)
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FALLING IN LOVE
アメリカ、1984年、上映時間 106分
監督: ウール・グロスバード、製作: マーヴィン・ワース、脚本: マイケル・クリストファー、音楽: デイヴ・グルーシン
出演: ロバート・デ・ニーロ、メリル・ストリープ、ハーヴェイ・カイテル、ダイアン・ウィースト、ジェーン・カツマレク