吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2030年ごろかも。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

革命の夜、いつもの朝


 1968年、フランスの五月革命のドキュメンタリー。

 たとえば全共闘運動の記録映画「怒りをうたえ」を見ると血沸き肉踊る興奮が味わえるのに、このドキュメンタリーにはそういう面白みがない。映画を観ながら、「しまった、わたしって五月革命のことなんてほとんど知らんやんか」と気付いてしまったのだ。だいだいが、フランスの学生たちはヘルメットをかぶったりしないから日本と違って党派の見分けがつかない。ゲバ棒も振るわないし、アクションの派手さがないのだ。なにしろ日本では「丸太抱えて防衛庁」なんていうシーンもあるんだからね。 

 学生や労働者たちが議論している場面が出てくるが、そもそも何について口角泡を飛ばしているのかさっぱりわからない。このドキュメンタリーは極めて不親切で、説明がほとんどなく、当時の記録をただつないであるだけなのだ。

 これではフランス史によっぽど詳しいか当時の体験者でなければ、見ても何もわからない。

 そうそう、「インターナショナル」が国によってメロディが微妙に違うことを知ったのは面白かった。日本で聞きなれている旋律と違う部分って聞いていてなんだか気持ち悪い(笑)。

 五月革命のことは何も知らないとはいえ、フランス労働総同盟(CGT)とかルノー労働争議とかシネマテーク・フランセーズの解雇事件とか、断片的に知っていることが出てくると、ああ、なるほどと思うが、それらの事件についても映像ではまったく断片的な取り扱いしかないので、理解が深まるということがない。

 それより、わたしがDVDを見ている側を通りかかった高校生の息子が、若者が暴れている場面やデモのシュプレヒコールを聞いて発した質問や感想が面白かった。

 いわく、「なんで『自由を』って言うてんの? フランスって独裁国家なんか? 言論の自由がなかったん? なんであんな暴れてるん、周りの自動車が壊されてるやんか、ええ迷惑やで。あんな人に迷惑かけてええのか? え? 労働者が搾取されてる? そんなことぐらいであんなに暴れるんか」(レンタルDVD)

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GRANDS SOIRS ET PETITS MATINS
フランス/カナダ、1968年、上映時間 120分
監督: ウィリアム・クライン、撮影: ウィリアム・クライン