吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2030年ごろかも。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

「キッズアーオールライト」

良識ある大人が眉をひそめながら読むような、残虐で破天荒な物語だ。目を覆うような残酷なシーンにファンタジーのフィルターをかけて多少緩和しようとしたきらいがあるとはいえ、気持ちのいい話ではない。だが、文体に勢いがあるものだから、ついつい読んでしまう。

 破綻したストーリー、リアリティのない設定とはいえ、主人公である高校生がなんの躊躇いもなく暴力に走るそのキレ方が、現代社会の浮遊感とか、宙ぶらりん感をよく表している。


 「リレキショ」とともに第39回文藝賞を受賞した。2作同時受賞となったが、「リレキショ」は癒し系、「オールライト」はバイオレンス系、とまったく作風が異なる。しかしどちらも若者の、世界とのつながりの実感のなさを描いている点では素材は同じと言える。

 二作品とも透徹した分析的視点に欠け、感性だけで書いている点が気になるのだが(「オールライト」には多少分析的試みがある)、村上春樹ふうの軽快でメタファーに満ちた文体は、今の若者にうけそうだ。

 物語としてのおもしろさは「キッズ アー オールライト」に軍配が上がるが、爽やかさでは「リレキショ」。お好きなほうをどうぞ。あるいは二冊まとめて読み比べるっていうのもいいかもしれない。