吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2030年ごろかも。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

狼少女


 泣いてしまいましたっ。少年が転校生少女との出会いと別れを経験して少し大人になる、切ない佳作。

 さて物語は…
 昭和50年ごろ(たぶん)、小学4年生の明が住む町に、見世物小屋がやって来た。明は興味津々だけれど、その演(だ)し物である「狼少女」が実は同級生の秀子が演じているという噂が立つ。秀子は家が貧しく、毎朝新聞配達をして家計を助けるけなげな少女だったが、貧しさゆえにクラスの虐められっ子だった。ある日、美しく勝気で正義感の強い金持ちのお嬢さんが転校生としてやってきた。彼女の名前は留美子。美しくおしゃれな留美子に淡い恋心を抱く明だった。留美子は虐められている秀子をかばうやさしく強い少女だ。三人はいつしかすっかり仲良くなるが……

 少年が経験するのは、淡い初恋と別れ、そして両親の不和。様々な思いが去来し、短い期間に10歳の明はその小さな胸に多くのことを詰め込んでいく。見世物小屋があの頃まだあったとはちょっと驚きだけれど、オイルショック直後ぐらいを時代背景にしているようだから、地方の郊外へいけばまだそういうものもあったのかもしれない。

 ここに描かれているのは、ありがちな物語。両親の不和の原因は、妻が外に働きに出たこと。少女が虐められる原因は、家が貧しいこと。転校生が憧れの目で見られるのはお金持ちの美しいお嬢さんだから。教師が居丈高なのは子どもたちのいろんな事情を知りながらそれを咀嚼できない若さがあるから。そして、少年が切ないのは初恋が一陣の風とともにやってきて風と共に去ったから。彼が小さな胸のなかに納めきれない人生の真実の一つを知ってしまったから。

 そしてそしてわたしが泣くのは、こども達が精一杯、<今>を生きて輝いているから。ありがちなお話はすべてがリアルで、ほんとうはそんな話なんてわたしも経験したことがないのに、それでも胸に突き刺さるのは、ここに描かれた子ども心が、<知りたくなかった真実>を一つずつ知っていくことによって失う子ども時代への惜別の情と大人への階梯を昇る切なさに満ちているから。


 大野真緒ちゃん、いいですねぇ~、うまいし綺麗だし、この先、いい女優になれるのではないでしょうか。(レンタルDVD)

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狼少女
日本、2005年、上映時間 106分
監督: 深川栄洋、エグゼクティブプロデューサー: 横濱豊行、松澤亜椰子、脚本: 大見全、小川智子、音楽: 崎谷健次郎
出演: 鈴木達也、大野真緒、増田怜奈、大塚寧々、利重剛手塚理美馬渕英里何なぎら健壱田口トモロヲ西岡徳馬