吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2030年ごろかも。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ブラッド・ダイヤモンド


 ブラッド・ダイヤモンド=「血のダイヤモンド」とは、紛争地域で産出され、武器購入費に当てられるダイヤモンドのことだ。何人もの仲買人の手を経て密輸され、宝石会社の手によって世界中に供給される。それは宝飾品だけではなく工業用にも使われているから、わたしたちの日常生活の中にも深く浸透しているといえるだろう。

 本作は、内戦下のシエラレオネを舞台にダイヤモンドをめぐって血で血を洗う争いをスリリングに描く。社会派ズウィックの作品だけれど、社会派作品というよりは戦争アクションもののようだ。「グローリー」や「ラストサムライ」のときと同じくズウィックの戦場描写はリアルで激しく、手に汗握る。

 9歳で両親を惨殺されたダニー・アーチャー(レオナルド・ディカプリオ)が、報道記者を装ってダイヤの密売を行っている。彼は傭兵の経験もあって武器の使い方には精通している。彼はアフリカ生まれのアフリカ育ちであるから、聞きなれないアクセントの英語をしゃべるので耳につく。密輸が発覚して逮捕された留置場で、一人の精悍なアフリカ人ソロモンが幻のピンクダイヤを隠していることを知ったダニーは、うまくソロモンに接近し、彼の行方不明の家族を探してやるともちかける。マディーは統一革命戦線(RUF)という反政府組織に拉致され、強制的にダイヤの採掘労働をさせられていたのだ。そしてここに、武器の資金源たるブラッド・ダイヤモンドの売買の実態を取材しているアメリカの女性ジャーナリスト、マディーがからむ。ダニーは美しいマディーに惹かれ、彼女にブラッド・ダイヤモンドのネタを提供するかわりに自分達のダイヤ探しに協力するよう取引する。かくてピンクダイヤを追う3人の危険な道行が始まった。

 家族愛に燃えるアフリカ人とダイヤ密売で大もうけを企む白人のアフリカーナ、そして美しいジャーナリスト。この三人が戦火をかいくぐってピンクダイヤモンドを掘り出す旅に出る。物語の構造じたいは古くからあるハリウッドの「お宝探しもの」と同じだ。鉱物資源を争奪して内戦が激化し、大金に化ける貴重資源が武器の購入費となる。住民を虐殺したRUFが「人民を解放するため」に労働力を徴発し、少年たちを兵士として狩り出すという恐るべき実態をこの映画は描く。

 ダイヤは買う者が居るから高く売れる。先進国が消費するダイヤのためにアフリカでは何万人もの人々の血が流れる、その構造をもっとえぐってほしかったのだが、最後まで物語を引っ張る力はあくまでスリルとアクションなのだ。そして描写不足とも思える恋愛。孤独な無頼漢ダニーが最後に見せる優しさがほろりとくるが、この役はレオナルド・ディカプリオに適役だったかどうかは疑問が残る。童顔のレオくんも髭をはやしてかなり精悍な雰囲気を作っているのだけれど、どうしても甘さが残るので、あまり悪辣な感じがしない。まあ、そういうところがかえっていいのかもしれない。その甘さや優しさが最後に観客の心をつかむのだから。

 ソロモン役のジャンモン・フンスーは西アフリカ出身の俳優で、息子を思う父を熱演して涙をそそった。少年兵の問題はいまだに尾を引き、まだ何万人もの兵士が存在しているというテロップが流れていた。現在ではキンバリー・プロジェクトが実施されていて、紛争ダイヤモンドは市場に流通しないような歯止めがかかっているということだが、実態はそれほど甘くなさそうだ。ズウィック監督はインタビューに答えて「ダイヤを買えとか買うなとかは言っていない。ただ、紛争ダイヤモンドの実態を知って考えて欲しい」と述べている。だが、ダイヤを採掘している労働者たちは彼らが決して手にすることのない貴石を探しているのだという矛盾をわたしたちはどう考えるのか、答えはおのずと見えてくる。

 大変よくできたアクションものなので、最後まで退屈しないでしょう。この映画を観てもなおダイヤを買おうという気になる人は少ないと思う。

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BLOOD DIAMOND 143分(アメリカ、2006年)
監督:エドワード・ズウィック、脚本:チャールズ・リーヴィット、音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演: レオナルド・ディカプリオジェニファー・コネリージャイモン・フンスーマイケル・シーン、アーノルド・ヴォスルーカギソ・クイパーズ