森下 伸也著 : 新曜社: 2003.4
奥付の著者紹介には「専攻:社会学、ユーモア学」と書いてある。ユーモア学? そんな学問があるんかい?
あるんです、それが。
この本の内容を一言でいえば、
「笑う門には福来たる」。
たったこれだけのことを言うために、ギリシア哲学から大脳生理学、宗教学、心理学、美学、歴史学、文化人類学などなどをフル動員するんだから、大したもんです。要するに「ユーモア学」というのは、10数年ほど前に興った新しい学問で、しかも人文・社会・自然科学すべてをクロスオーバーする学際的なものらしい。
本書は、後半へ進むほどにおもしろみが増し、著者のボルテージがあがり、最後は、あらゆる宗教を超える「超宗教」としての<笑い教>の開闢が高らかに告げられる(一部嘘)。
いや、実際、笑いをその質と量で分類していく、おきまりの「笑いとは何か」という定義から始まり、その歴史を語り、社会の中で果たす役割を解説する第3章までは普通の概説書・啓蒙書だったのだが、4章あたりから俄然、著者の面目躍如。ユーモアの達人をめざして具体的なジョークの例示が始まると、これがもうおかしくって! 「これはおもしろいな」「これは使える」「このジョークはどこがおもしろいんや?」と一人ぶつぶつ言いながら読み進めていた。
最終章に至ると、もうほとんどアジテーションだ。偉大なる哲学者ニーチェをたびたび引用し、著者はユーモアの敵となる宗教をこき下ろし、「いかなる運命の不条理、いかなる神義論も笑いとばせ」と活を入れる。「[権力亡者、金銭亡者、自己中心主義者、狂信的宗教信者たちへの]反撃、いわばユーモリストの聖戦を開始しなければならないのだ」とな。
おもしろいんだけれど、ユーモアで社会変革をめざすっていうのは斜に構えていいかもしれないけど、それはちょっとかなりだいぶ無理があると思う。まあ、著者もそんなこと、笑いながら書いているに違いないけど。
やっぱり最後はこの言葉で決めてほしかったなぁ。
「万国の労働者よ、笑え!」 ……ここで笑ってほしいんですけど……