
めまぐるしく画面を分割させてみたり早送りしたり、その楽しい映像感覚は映画の雰囲気にあってとてもいいと思ったが、ふらふらする30歳男の、いわば永遠のモラトリアム男の不定型なだらしなさが映画そのものを引っ張ってしまい、最後までテンションが持たなかったのが残念。
映像テクニックは前作「スパニッシュ・アパートメント」とほぼ同じで、雰囲気はとても似ているが、前作のテーマが異文化の中でもまれて成長する青春の混沌と希望だったのに対して、本作はその5年後、とうとう30歳になるというのにいまだにモラトリアム人生のような暮らしをしているグザヴィエの困惑と停滞とまたまた希望、というように微妙に暗くなっている。だから、前半、前作と同じように疾走してくれる演出ぶりが楽しくてワクワクしたのだが、だんだん尻すぼみになり、結局散漫なまま終わってしまう。
5年の間にはいろんなことがあり、グザヴィエは恋人マルティーヌと別れているけれど、いまだに友達づきあいは続いている。そのマルティーヌはシングルマザーになって男の子を育てていて、子守をグザヴィエに頼んだり、どうやらグザヴィエはキープ男というかアッシーというか、マルティーヌにとっては便利な男のようだ。グザヴィエは脚本家になってテレビの脚本を書いたりしているが、まだそれほど売れているわけではない。
で、本作はそのグザヴィエが書く物語として進行する。グザヴィエという男は相変わらず恋愛のターゲットが定まらず、ふらふらといろんな女性とつきあう生活を続けている。そんなとき、スペイン時代のハウスメイトでイギリス人のウェンディと再会し、同じく脚本家になってる彼女と一緒に仕事をすることになる。このウェンディ、前作のときのほうがふっくらして可愛らしかった。西洋人って老けるのが早いね。
で、舞台は前作のバルセロナから本作はパリ、ロンドン、ペテルスブルク、とヨーロッパを股に掛ける。それぞれの街並みをもう少し見せてくれてもよかったのだが、堪能できたのはパリかな。で、グザヴィエくんは相変わらずふらふら男の頼りなさぶりを発揮してくれて、この男、絶対こんなやつ、わたしなら結婚しないね、と思わせる情けないモラトリアムぶり。恋愛もはっきりしない、仕事も意に沿わない、30歳になってもまだそれかよ。な~んて厳しいことを言いたいけれど、実は30歳なんてそんなものなのだろう。
20代前半のモラトリアムや坩堝状混沌って見ていてもどこか眩しいものがあったけど、本作のように年齢が上がってしまってまだ同じことをやっているとなると、だんだん見ているのがしんどくなってくる。なので、ラストに近づくに従って白けてしまう。本作も悪くはないけれど、どこかに綺麗な着地を見せてほしいというこちらの期待があったのものだから、こういう決着でいいのかなぁ、そんなもん? という疑問が残って消化不良だった。
それに、気づいてしまったんだけど、わたし、ロマン・デュリスの顔が嫌いなんだわ! あの顔をずーっと見続けているとだんだんイライラしてくる。あの顎、あれが嫌い。(レンタルDVD)(R-15)
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LES POUPEES RUSSES
フランス/イギリス、2005年、上映時間 130分
監督・脚本: セドリック・クラピッシュ、製作: マシュー・ジャスティス、ブリュノ・レヴィ
出演: ロマン・デュリス、ケリー・ライリー、オドレイ・トトゥ、セシル・ドゥ・フランス、ケヴィン・ビショップ、アイサ・マイガ、エフゲニィヤ・オブラツォーヴァ、ルーシー・ゴードン