吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2030年ごろかも。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

新幹線大爆破

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 して、今度は最新作の方を。どちらが面白いかというとどちらもそれぞれの味があってよろしい。最新作はやはり技術の進歩を実感できるのと、さらにいっそう車体などの姿が写る場面が多いため、鉄道ファンには新作のほうが喜ばれるのではなかろうか。

 この最新作は配信のみで劇場公開していないのが実にもったいない。と思っていたら、10月に2週間限定公開したらしい(私は本作を5月に配信で見た)。かなりの大作なので、大きなスクリーンで見たいところ。物語は、50年前の「新幹線大爆破」という事件が実際に起きたこととして前提されており、その関係者が大きな鍵を握る人物として登場する。

 「シン・ゴジラ」の樋口真嗣監督だけあって、テンポよく進む展開に小気味よさを感じると共に、スケールアップした撮影も堪能できて実に満足感が大きい作品である。しかし、犯行動機についてはいくつもの批判が噴出すると思われる。前作では社会情勢を反映した犯人像が造形されていたが、今回は内向きな動機に、50年後のこの日本の縮み加減がある意味、見て取れる。

 前作との大きな違いは、舞台となる車両が東海道新幹線ひかり号から東北新幹線はやぶさ号に代わったこと。時速80キロ以下で爆破するという設定が時速100キロにアップしたこと。運転士が2人いたのが1人になりさらにそれが若い女性である、などなど。重要な登場人物に女性が増えた(口の悪い女性政治家とか)ことが21世紀の「女性活躍」推進時代を反映している。さらに、ユーチューバーのはしゃぎっぷりやらスマホを利用した展開やらがやはり時代を反映している。

 物語の流れは前作とほぼ同じ。謎の犯人からの脅迫電話が届き、「走行中の東北新幹線に爆弾を仕掛けた、時速100キロ以下になると爆破する。1000億円用意すれば解除方法を教える」というものだった。連絡を受けた車掌の高市和也はパニックになる乗客を落ち着かせ、さらに新人車掌の「暴走」も阻止せねばならないという難儀な役回りを担わされるが、彼が最後まで全力を振り絞っている姿には感動で涙がちょちょぎれそうになる。演じた草なぎ剛、えらいぞ!

JR東日本が特別協力し、実際の新幹線車両や施設を使用した撮影が行われた」(映画comの作品解説より)というから、迫力も満点。全体に、プロの仕事をたっぷり見せてくれるという点が非常に興味深い。しかしその分、「社会派」ぽさがほぼなくなってしまった。まあ、どっちがいいかは好みかと思う。新作の方は劇場公開してくれたら見に行きたいと思うほど迫力たっぷりだった。

 そういえばわたしは東北新幹線に一度だけ乗ったことがある。2年前だったか、新青森駅が画面に映ったので思い出した。なんだか懐かしい駅舎に思える。(Netflix

2025
日本  Color 137分

監督:樋口真嗣
エグゼクティブプロデューサー:佐藤善宏
脚本:中川和博、大庭功睦
オリジナル脚本:小野竜之助佐藤純彌
撮影:一坪悠介、鈴木啓造
音楽:岩崎太整
出演:草なぎ剛細田佳央太、のん、要潤尾野真千子、豊嶋花、黒田大輔ピエール瀧坂東彌十郎斎藤工大原優乃森達也