吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2030年ごろかも。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

映画 イチケイのカラス

 

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イチケイとは東京地方裁判所第3支部第1刑事部のことらしい。テレビドラマの劇場版なので元のドラマを見ていないと基本設定がわからないのだが、それでも十分楽しめた。

 原作漫画とは異なり、バディ裁判官の若手のほうを女性にしたというのが正解ではないか。この役は黒木華が実に見事に演じている。彼女の芸達者ぶりは素晴らしい。

 ストーリーは閉鎖的な田舎の利権と「郷土愛」と企業の汚染物質垂れ流し問題とが複雑にからまりあう社会派作品の様相を呈しているのだが、そういう骨格の部分よりも、主役二人のキャラクターの面白さがこの映画の魅力とみた。

 舞台は岡山県の海沿いの町。テレビ版の主役であった入間みちお(竹野内豊)はイチケイを去ってこの田舎の裁判所に左遷させられている。が、本人は全く気にする風もなく田舎生活を堪能している。入間裁判官の同僚であった坂間千鶴(黒木華)も偶然(!)隣町に引っ越して弁護士となっている。とまあ、都合のいい話なのだが、それは作り話なんだからいいとして、この変人入間判事のキャラクターが実によい。権力の一端を担う裁判官であるのに反権威的であり、前例を踏襲しない改革派である。もちろん出世には興味なさそうだ。そしてここで持ち上がった、自衛隊イージス艦と民間船衝突事件やら防衛大臣傷害事件やらときな臭い話が展開していくのだ。

 変人に対して真面目で堅物な坂間という組み合わせが実に面白い効果をもたらしている。社会派作品の割にはコメデタッチで、でも決めるところは決める、というメリハリの利いた演出もよい。お話じたいにはあまり現実味はないのだけれど、実はここには公害現地の苦しみが横たわっている。設定は架空でも、実際にありえそうなエピソードがそろっているので、考えさせられる。

 ただ、これが劇場版映画というのにはちょっと寂しい。やはり日本映画は製作費をかけなさすぎる。 (Amazonプライムビデオ)

2023

日本  Color  119分
監督:田中亮
製作:大多亮、市川南ほか
原作:浅見理都
 脚本:浜田秀哉
撮影:四宮秀俊
音楽:服部隆之
出演:竹野内豊黒木華斎藤工、山崎育三郎、柄本時生西野七瀬田中みな実庵野秀明宮藤官九郎、吉田羊、向井理小日向文世