「フランス料理のレストラン」とわたしたちが今呼んでいるものは、フランス革命のときに貴族の館で雇われていた料理人が解雇されて路頭に迷いその結果、町で飲食店を始めたのが嚆矢であるということは何かで読んで知っていた。本作はその実話に基づくという。本作はその、世界初の庶民のためのレストランを開業した男を主人公とする。
こういう映画を見ると、どこまで史実でどこが創作なのかを知りたいと思ってしまうのがわたしの常なのだが、詳しいことがよくわからないのが残念だ。
して、本作の主人公マンスロンは公爵の館で雇われていた腕のいい料理人だったのだが、じゃがいものデリシュを供したばかりに貴族たちに馬鹿にされ、解雇されてしまう。貴族曰く、「じゃがいもだってえ? ドイツ人じゃあるまいし。トリュフだってえ? 豚の餌だろうが!」
貴族たちの嘲笑と侮辱に耐えるマンスロンの気持ちがわたしには手に取るようにわかって、冷や汗が出そうになる。気の毒でたまらない。結局彼は十代の息子を伴って田舎に引きこもることになる。しかしその彼の元にある日、「料理を習いたい」という中年女性ルイーズが現れる。断るマンスロンに食い下がる彼女の熱意にほだされて、マンスロンは料理への情熱を取り戻し、やがては村の人々向けの店を開くことになる。
これが世界初のフレンチレストランなわけだが、街中の飲食店ではなく田舎の林の中の店である。店というより、一軒家の一階にテーブルを数台運び込み、庭にもテーブルをセットしただけという簡易なものである。
何度も貴族に馬鹿にされ無視され軽々しく扱われることにさすがに怒りを隠せないマンスロンが、公爵に一矢報いる場面は本当に胸がすく。そして彼が店をオープンした数日後にはバスティーユ監獄が襲撃されフランス革命が始まったのであった。貴族の時代は終わったのだ。
この映画を見て、「グランメゾン・パリ」を思い出した。ミシュランの三ツ星が付くような店は現代の「貴族の館」だ。庶民には一生行くことができない店に違いない。グランメゾン・パリで供される最高級の料理はもちろんおいしそうでたまらないが、そんな店よりも庶民のためのレストランのほうが気楽でいい。
この映画では貴族の傲慢さが憎々しげに描かれていた。非常にわかりやすい展開なので、安心して見ていられる。料理があまり登場してこないのが残念な点。(Amazonプライムビデオ)
2020
DELICIEUX
フランス / ベルギー Color 112分
監督:エリック・ベナール
製作:フィリップ・ボエファール、クリストフ・ロシニョン
脚本:エリック・ベナール、ニコラ・ブークリエフ
撮影:ジャン=マリー・ドルージュ
音楽:クリストフ・ジュリアン
出演:グレゴリー・ガドゥボワ、イザベル・カレ、バンジャマン・ラヴェルネ、ギヨーム・ドゥ・トンケデック
