吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2030年ごろかも。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

アメリカン・フィクション

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 アカデミー賞の脚色賞を受賞しているのに劇場未公開。面白いのに、実に残念だ。

 主人公はなかなか最新作が書けない中年の独身黒人作家、愛称モンク。本名セロニアス・エリソン。彼は皮肉屋でかつ上から目線のパワハラ全開男なので、教鞭をとる大学で問題教員認定されて、あえなく休暇を命じられる。久しぶりに帰った実家では母親が認知症を患い始めており、妹(姉?)は離婚したばかり。弟(兄?)はゲイをカミングアウトして自由気ままな恋愛生活。

 身辺にいろいろと問題を抱えるモンクは、自分の作品を「黒人作家の棚」に配架されて書店員に文句をいい、怒りが収まらない。冗談半分に「殺人を犯して逃亡しているド底辺の黒人が自らの反省を告白した」という体(てい)の小説を偽名で書いたところ、これがなんと大ヒット。ついには文学賞候補にまで挙

がってしまう。

 モンクは黒人がステレオタイプの型にはめられることにうんざりしているのだが、自らそのステレオタイプにはまってみたら、これが見事に白人に大うけしたということに内心穏やかでない。モンクの一家は全員インテリ揃いであり、父も姉も兄も医者だ。母は教師。モンクだけが好きな文学の道を歩んでいる。しかし彼は教養のない黒人のふりをして小説を書いて、しかもそれが世間の評判を呼んだことに我慢ならない。

 この映画は、多文化だの多様性だのと呼ばれるところのものが所詮は「白人の贖罪」に過ぎない、贖罪したい白人に受けるものに過ぎないということをものすごい皮肉とともに笑い飛ばして見せている。これはなんという面白い映画だろう。ま、原作小説が面白いのだろう。そして苦虫を噛み潰したようなジェフリー・ライトの演技が見事である。

 軽い作品でありながら皮肉が利いて、さらに演出もなかなかシュールでよろしい。ラストシーンなんか3つも用意されているのだ。さて、どの結末がいいかな?(笑) (Amazonプライムビデオ)

2023
AMERICAN FICTION
アメリカ  Color  118分
監督:コード・ジェファーソン
原作:パーシヴァル・エヴェレット
脚本:コード・ジェファーソン
音楽:ローラ・カープマン
出演:ジェフリー・ライト、トレイシー・エリス・ロス、エリカ・アレクサンダー、イッサ・レイ、スターリング・K・ブラウン