上映時間が長い割にずっと暗い話ばかりが続くので、たいていうんざりしそうになるのだが、クライマックスのレースがすごい迫力。と思ったらとんでもない大事故が起きるので驚くばかりだった。
フェラーリのことはほぼまったく知らなかった。フェラーリは1947年にフェラーリ夫妻が創業した会社であり、創業者エンツォが第2次世界大戦中に知り合った若い女性との間に男の子をもうけており、本妻に知られることなく10年が過ぎていたというのにも驚いた。で、とうとうばれる。そのころはフェラーリの経営が傾いて倒産かどうかという瀬戸際でもあり、会社はつぶれかけ、長男は病死して家庭も大揉め、愛人には息子を認知しろと迫られ、進退窮まっている。
会社はフォードに身売りするという噂も出る始末。もっともその噂はフェラーリ自身が流していたのだが。この映画を見ながら、「フォードvsフェラーリ」のことを思い出していた。あの映画はもっと後の時代を描いているのではと思っていたが、実はこのころからくすぶっていた出来事であった。
ところで、問題の大事故は1957年、イタリアの公道を猛スピードで走るレース「ミッレミリア」で起きた。野を越え山を越え町を走り抜けるレースの途中、障害物のせいでタイヤがパンクしたフェラーリ車は沿道の観客を巻き込んで大破した。子ども5人を含む9人が死亡し、レーサーのアルフォンソ・デ・ポルターゴ侯爵も亡くなった。彼の死体は真っ二つに切断されるという激しい損傷を受けていた。この場面でわたしは震え上がった。よくこんな危険なレースが行われていたものだ。もちろんこのあとミッレミリアは中止となった。
そんなあれやこれやがあった末にフェラーリは経営危機を乗り越える。しかし、映画全体としては説明不足で、わたしはかなりの事実をWikipediaで読んで知った。おまけにとにかく話がドロドロしていて爽快感に欠ける。日本で全然ヒットしなかったのもやむなし。アダム・ドライバーが老け役に挑戦して頑張っているのが唯一の見どころか。(レンタルDVD)
2023
FERRARI
アメリカ B&W/C 130分
監督:マイケル・マン
製作:マイケル・マンほか
原作:ブロック・イエーツ 『エンツォ・フェラーリ 跳ね馬の肖像』(集英社文庫刊)
脚本:トロイ・ケネディ・マーティン
撮影:エリク・メッサーシュミット
音楽:ダニエル・ペンバートン
出演:アダム・ドライヴァー、ペネロペ・クルス、シェイリーン・ウッドリー
