吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

身代わり忠臣蔵

https://eiga.k-img.com/images/movie/99885/photo/42829376f16a7b6c/640.jpg?1700093111

 原作は漫画かなと思ったほどにドタバタが過ぎるコメディ時代劇。最後のほう、討ち入りの段になってやっと少しだけシリアスな場面も出てくるのだが、こんな奇想天外な展開を考えた原作者が偉い。

 で、原作者が脚本を書いているから原作もこんなふうにコメディなんだろうか。吉良上野介赤穂藩主に切りつけられて死んでしまう、という点がまずは史実と違っていて、次に不名誉な切りつけられ方をして挙句に死んでしまったという「事実」を隠すために吉良の末弟である生臭坊主の孝証(たかあき)が上野介のふりをさせられて幕府や周囲を欺く、という点がコメディの発端。その奸計を弄したのが若き家老の斎藤宮内であり、家臣のくせに孝証を邪険に扱う。次に、赤穂の大石内蔵助も昼行燈のような家老であり、この二人が吉原で偶然出会って意気投合するという伏線があり。

 とにかくドタバタ。全部ドタバタ。あほくさいけどつい笑ってしまう。でも最後はやっぱり身代わりだから赤穂浪士に切られてしまう上野介…。

 で、この物語では根性悪の本物と違って身代わりになった末弟はお調子者だけれど憎めなくて、実は心優しい男であるという点が観客の同情をそそる。悪人は将軍側用人柳沢吉保柄本明、ほんとに悪人を演じるのがうますぎる)である。

 あまりにもアホらしい展開なのだが、結局のところ「仇討ち」だの「復讐」だのといった憎み合いはやめましょうという教訓物語だったのだろう。今戦争をしている国々の人たちに見せたい(無理やな)。最後の「ラグビー」はたまらんかった(気持ち悪い)。(レンタルBlu-ray

2024
日本  Color  119分
監督:河合勇人
企画・プロデュース:橋本恵一
原作:土橋章宏
脚本:土橋章宏
音楽:海田庄吾
出演:ムロツヨシ永山瑛太川口春奈寛一郎森崎ウィン本多力、橋本マナミ、林遣都北村一輝柄本明