アフガニスタンに駐留する米軍兵士が、命の恩人のアフガン人通訳との「コヴェナント(契約、誓約を意味する聖書の言葉)」を命がけで果たそうとする社会派作品。
ガイ・リッチー監督に「社会派」は似合わないと思ったのだが、いつもの派手なコメディ的演出は禁欲しつつも、本作もかなりエンタメに寄っているため、手に汗握る戦闘アクションが繰り広げられ、緊張が途切れない。
物語の時は2018年3月、アフガニスタンに米軍が侵攻してからすでに17年になろうとしていたが、タリバンとの戦いはいつ果てるとも知れない状態だった。タリバンの秘密爆弾工場や武器庫を探索する任務に就いているジョン・キンリー曹長は、新しい通訳に四か国語を操れるアーメッドを雇った。アーメッドは家族共々アメリカに移住することを希望し、ビザの発給という報酬を目当てに米軍の通訳という危険な仕事を引き受けたのだった。彼は観察眼に優れ、通訳の仕事を超えてジョンに状況をアドバイスできるだけの知性を備えていた。初めはアーメッドをあまり信用せず見下していたジョンだが、徐々にその能力の高さに一目置くようになる。
やがてジョン・キンリーの部隊は山野を軍用車で駆け抜けるうちにタリバンの追手に追いつかれて、ジョンとアーメッドを残して全滅してしまう。しかもジョンは銃撃を受けて瀕死の重傷を負い、進退窮まる。タリバンは追撃の手を緩めない。米軍基地まで100キロ以上の道のりだ。険しい山の中で、しかしアーメッドは決してあきらめず、ジョンを手作り担架に乗せて徒歩で山を越えることを決意する。
この山越えシーンの迫力たるや、息を飲むようなスリルがある。黙々とジョンを運ぶアーメッドの胆力には恐れ入る。何がこの男をここまで突き動かしているのか? ジョンを帰還させたアーメッドは英雄と称賛されるが、同時にタリバンから報復を受けることになる。帰国したジョンは、「アメリカへのビザを渡す」というアーメッドとの約束を果たすため、決死の救出作戦に出る。再びアフガニスタンに向かうジョンに勝算はあるのか?
ガイ・リッチーの演出力と、アーメッドを演じたダール・サリムの名演が光り、見ごたえある作品に仕上がっている。
アフガニスタンの険しく枯れた山野に見立てたロケ地がスペインであることを知って驚愕したが、この雄大な風景が素晴らしい。ドローン撮影が多用されていて、映像的には見どころだらけだ。劇場の大スクリーンで見たい映画。
とはいえ、本作を自己犠牲と恩返しをテーマにした高潔な倫理もの、とだけ受けとめて感動するのはナイーブに過ぎるだろう。映画は徹底的に米軍兵士の視点から描かれているからだ。タリバンは悪魔にしか見えない。そもそも外国になぜ米軍が駐留していて、わが物顔で民家を捜索したり、雇った現地人通訳に偉そうに命令したりできるのか?
この作品では政治的歴史的背景を一切説明しないので、なぜこんな事態が起きているのかさっぱりわからない。この映画をきっかけに、国際政治の複雑な事情について思いを馳せたい。今起きている、パレスチナでの虐殺とも絡む憎悪の連鎖を断ち切るためにも。
