吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ムーンフォール

https://eiga.k-img.com/images/movie/96561/photo/43138febb8a85a9a/640.jpg?1655262265

 本作はアメリカでは劇場公開されたようだが、日本ではAmazonプライラムでのみ配信されている。豪快なスケールのCG使いまくりの大作なのに大スクリーンで見られないとは、いかにももったいない。

 で、内容はといえば、やはりエメリッヒ監督作らしい大仰さと設定の辻褄の合わなさと壮大なスペクタクルで理屈なんかどうでもいいと、グイグイ押してくる、定石通りのもの。「ムーンフォール」って、そのものずばり「月が落ちる」ですね、「月が出た出た、月がぁ出たぁ、よいよい~♪」と歌うのは炭坑節だが、今回は月が落下してくるので、歌っているどころじゃない! 落ちて来る月をどうやって押し返すよ? 

 それはね、もちろん特攻作戦よ、あれよあれ! 「アルマゲドン」が大好きなんだよねえ、アメリカ人は。日本の特攻に苦戦したトラウマから未だに脱することができないせいなのか、この手のディザスターものでは必ずといってもいいほど特攻作戦が採られる。で、特攻隊はヒーローになれるんだからそれで良し。

 月が落ちて来る原因は何かというと、月が軌道を離れたせい。で、なんでそういうことになったかというと、月の中心には大きな穴が開いていて、そこからなんだかよくわからない流動体のような蛇みたいなものがにょろにょろと出てきて…。いや実はね、月は人類の先祖が作った構造体だったんですよ、という種明かし。へー、あ、そー。もうここで脱力して笑うしかない展開。

 じゃあその人工物である月なんだから、なんとかして元に戻せないわけでもないはず。で、元宇宙飛行士でかつて同僚を宇宙空間で死なせてしまった責任を問われた男が、今は没落して寂しく貧しく暮らしていたところに白羽の矢が立ちまして。で、仲間として連れて行くのはずぶの素人、自称博士のオタク青年(もはや中年?)。白羽の矢を立てたのはかつての同僚女性、今は出世してNASAのえらいさんになっていた。彼女もいっしょに決死隊として月へ飛ぶ。飛ぶといってももうほとんど月は地球の目の前まで迫っているから、あっという間に到着できる。

 そういう本筋のサイドストーリーとして再婚家庭の話が二つあって、家族と使命とどちらをとるかみたいな葛藤があって。アメリカ政府は核爆弾で月を押し返そうとしているけど、そんなことをしたら放射性物質雨あられと降ってくるんだから、あかんでしょ、という葛藤があって。いろいろあって、ご都合主義が暴走する物語。

 この映画が日本では劇場公開しなかったのはなぜだろう。大津波のシーンが東日本大震災を想起させるから? 中国人は活躍するけど日本人は登場しないのは今どきのハリウッド映画らしい。大味なパニック映画が好きな人にはお勧め。(Amazonプライムビデオ)

2022
MOONFALL
アメリカ / 中国 / イギリス / カナダ  130分
監督:ローランド・エメリッヒ
製作:ローランド・エメリッヒハラルド・クローサー
脚本:ローランド・エメリッヒハラルド・クローサー、スペンサー・コーエン
撮影:ロビー・バウムガートナー
音楽:ハラルド・クローサー、トーマス・ワンカー
出演:ハル・ベリーパトリック・ウィルソン、ジョン・ブラッドリー、チャーリー・プラマー、マイケル・ペーニャドナルド・サザーランド