吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ブラック・シー

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 これは意外な拾い物。潜水艦映画と言うからてっきり戦争アクションかと思ったのだが、そうではなくてナチスのお宝探しの話。はあ、よくあるあれね、トレジャーハンター。しかしこの映画はちょっと趣向が違う。なにしろ海底に沈んだUボートも登場するという、古い時代の潜水艦やら機械が好きな人間にはたまらない設定。そもそも主人公が乗船するロシアの潜水艦自体がぼろぼろの錆びだらけポンコツで、いまどきこんなの誰が操縦できるんだろうと言う代物。

 ジュード・ロウが主役を張るので見てみたら、とってもいい役をもらっているではないか。このところ悪役が身に付いてきていた彼の、今回の役はお宝を狙う癖のある艦長なのだが、その実、情け深い人間であったことが最後にわかる。なんか泣かせるやんかー、という結末(あ、ネタバレか?)。

 今どきの機械はタッチパネルで操作したりバーを前後させるだけみたいな簡単な作りが多いのに、本作のレトロ潜水艦ではいちいち人間がよいしょっとバルブを回したりしているのがツボ。

 ロシアの潜水艦をイギリス人たちが一緒に操縦して、言葉が通じないので衝突が起き、誰もかれもが欲の皮が突っ張っているのでたちまち予想通りにいがみ合い殺し合いへと発展する。しかもUボートが沈んでいる場所はグルジアジョージア)であり、現在ロシアと交戦中というややこしいことが背景にあり、潜水艦はうっかり浮上するとロシアに攻撃されてしまう。なんやかんやと八方ふさがりの上に、性格の悪い士気の低い寄せ集め船員たちが足の引っ張り合いをするから、阿鼻叫喚。さてどうする、ジュード・ロウ艦長。

 これは寄せ集め組織をいかに統率するかという実験映画でもあるだろう。現実のさまざまな場面で同じようなことは起きているだろうし、なんだか身につまされてしまう人も結構いるのではないか。潜水艦映画独特の閉塞感はまあまああったし、戦闘こそないが疑似的な戦闘場面はあり、緊迫感はそこそこに。

 ジュード・ロウが意外にかっこよかったので、わたしとしては満足。結末にはじわっと感動した。(Amazonプライムビデオ)

2014
BLACK SEA
イギリス / ロシア  Color  115分
監督:ケヴィン・マクドナルド
製作:チャールズ・スティール、ケヴィン・マクドナルド
脚本:デニス・ケリー
撮影:クリストファー・ロス
音楽:イラン・エシュケリ
出演:ジュード・ロウスクート・マクネイリーベン・メンデルソーン、デヴィッド・スレルフォール