吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ジェントルメン

https://eiga.k-img.com/images/movie/92482/photo/2616c6d1536d2f6e/640.jpg?1616480282

 ガイ・リッチーガイ・リッチーガイ・リッチー! 「ロックンローラ」でファンになって以来、彼の作品はとにかく面白いのでどれも必見。今回の本作も、最初から最後までガイ・リッチー節全開で楽しませてもらいましたよー。

 過去と現在を往還する構成、観客をひっかけるトリックは相も変わらず上手い。そして今回はさらにひねったことに、登場人物に映画内映画のストーリーを語らせるという趣向。

 リッチー監督作の真骨頂はストーリーではなく台詞

の面白さと演出と編集のスタイリッシュさにある。粗筋なんて言い出したら40字ぐらいで書けてしまうぐらい、どうでもいいものだ。ちなみに今回の粗筋は、”大麻工場を売り飛ばす、いわばM&Aをめぐるギャングの争い” おおっと、28字で書けたわー(笑)。

 しかし粗筋はそんなに簡単なのに、ここに強欲な人間がわらわらと登場するから話が超絶ややこしくなる。その人間関係とそれぞれの思惑を書いていたら1000字ぐらいかかりそうなので省略する。で、そのややこしさがまた本作の魅力で。よくぞこんなどうでもいい話をこれだけ面白く娯楽作に仕上げたよ、天晴なりガイ・リッチー

 して、本作の主人公と思しきヒュー・グラントが最初に登場して、「これから、実録物の映画を作りたい。オレが考えているストーリーはこうなんだ」と語り始める。誰に向かって語り始めるかって? それは、ヒュー・グラントが創ろうとしている映画の主人公(実在のヤクザ、マシュー・マコノヒー)の手下に向かって。あ、いや、実在と言ってももちろん映画の中での実在なのであって、現実の我々が住んでいる場所での実在ではない…とかよけいな説明が必要なぐらいにこの粗筋は実は説明しにくい。誰や最初に40字で説明できるとか言うたんは。

 で、このややこしさが細部にわたって面白いので是非是非ご覧あれである。マシュー・マコノヒーの愛妻家ヤクザぶりが堪能できる。その愛されている妻が「ダウントンアビー」の長女メアリーを演じたミシェル・ドッカリー。メアリーのイメージそのままに度胸の据わった姉御を演じて超絶かっこいい。

 さて、ではこの映画の主人公は誰だったかというと、当初主役かと思ったヒュー・グラントはチンケな私立探偵で、狂言回しのナレーター役であった。主人公は堂々たるヤクザの親分、今や大麻工場を売り払って引退を考えているマシュー・マコノヒーである。彼の手下役のチャーリー・ハナムが可愛くてよかった。いやもう40歳のおじさんに「かわいい」はないかな。ありゃ、彼は「パシフィック・リム」の主演であったか! あと、コリン・ファレルが別にやくざでもないのにこの買収話にからんでくるとか、無駄に面白かった。(レンタルDVD)

2019
THE GENTLEMEN
イギリス / アメリカ  Color  113分
監督:ガイ・リッチー
製作:ガイ・リッチー、アイヴァン・アトキンソン、ビル・ブロック
脚本:ガイ・リッチー
撮影:アラン・スチュワート
音楽:クリストファー・ベンステッド
出演:マシュー・マコノヒーチャーリー・ハナムヘンリー・ゴールディング、ミシェル・ドッカリー、ジェレミー・ストロング、エディ・マーサンコリン・ファレルヒュー・グラント