吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

返校 言葉が消えた日

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 社会派ホラー映画という触れ込みに惹かれて見始めたのだが、これは台湾の黒歴史に向き合った作品として印象に残った。こういう映画が中国本土では作れないだろうと思うと悲しいし、日本ではもっと難しいだろうと思うと憂鬱になる。

 「学校の怪談」みたいな映画やなあと思いながら見ていたが、原作はゲームだと後から知って驚いた。世界的にヒットしたゲームだそうな。時代を独裁政権下に設定し、夜の学校に閉じ込められた美少女生徒とその後輩男子が必死に学校の外に逃げ出そうとするがなぜか逃げられず、悪夢のような恐ろしい目に遭うという展開。学校の中で開かれていたであろう教師たちの秘密の読書会が当局に知られることとなって先生たちが拷問の末に殺されてしまったとか、おどろおどろしい化け物が徘徊するとか、いろいろと血なまぐさい。

 しかも教師と生徒の恋愛など、ほろりとさせる要素もあり、恋と嫉妬と青春物語、みたいな要素に権力の弾圧を絡めるという力技。なんといっても主演のワン・ジンが超絶清純派的可愛らしさで画面いっぱいにその涼しげな目元を見せてくれるものだから、うっとり。でも映画は怖い。ホラーが苦手なわたしにはこの程度の映画で十分怖い。

 かつての言論弾圧の時代が再び来ないことを祈る。ラストシーンに漂う切なさはなかなかのもの。(レンタルDVD)

2019
DETENTION
台湾  Color  103分
監督:ジョン・スー
製作:リー・リエ、リー・ヤオフア
脚本:ジョン・スーほか
撮影:チョウ・イーシェン
音楽:ルー・ルーミン
出演:ワン・ジン、ツォン・ジンファ、フー・モンボー、チョイ・シーワン、チュウ・ホンジャン