吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ジャコメッティ 最後の肖像

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 変人その1のアルベルト・ジャコメッティ晩年の物語。彼の肖像画のモデルになった若きライターの作品が原作になっている。ジャコメッティの変人ぶりが余すところなく描かれていて、そんじょそこらのコメディよりも面白い。

 ジャコメッティのアトリエ兼自宅が場末の建物の地下路地みたいなところにあるのも意外だったし、彼の食生活の貧しさというか無頓着さにも笑った。何かと面白くて、ジャコメッティに騙されてうっかりモデルになってしまったライターの戸惑いやら驚きやらが素直に表れていて、とても楽しい作品。

 愛人が堂々とアトリエにやってきて、ジャコメッティはメロメロ状態で彼女に貢いでいるとか、いかにもおフランスらしい。しかもジャコメッティは単なる変人じゃなくてやっぱりアーティストだった。その作品への執念には恐れ入る。ジェフリー・ラッシュがフランス語で演じているのだが雰囲気がとてもよく出ていて、違和感なし。

 モデル役をやらされた若きライターJames Lordは、実は当時はすでに40代で、高名な美術評論家だったが、アーミー・ハマーが演じているから実年齢よりぐっと若く見える。

 ジャコメッティのファンでもそうでもなくても楽しめる一作。

 そういえば我が家にもジャコメッティの木彫り彫刻があったなあと思い出した。いや、あれはジャコメッティじゃなくてアフリカ民芸品みたいなベルギー土産だった。お気に入りの作品なので、やっぱりジャコメッティを好きだったんだわ、わたし。映画をみてますます好きになったよ、アルベルト!(レンタルDVD) 

2017
FINAL PORTRAIT
イギリス Color 90分
監督:スタンリー・トゥッチ
製作:ゲイル・イーガンほか

原作:ジェームズ・ロード『ジャコメッティの肖像』
脚本:スタンリー・トゥッチ
撮影:ダニー・コーエン
音楽:エヴァン・ルーリー
出演:ジェフリー・ラッシュアーミー・ハマークレマンス・ポエジートニー・シャルーブ、シルヴィー・テステュー