今だけ無料なので見たこの作品は、かのルイス・マイルストン監督の名作のリメイクである。これがテレビドラマとは思えないほどの戦闘シーンの迫力には瞠目した。カラーになっている分も豪華な感じがする。
名作と言いながら、1930年の作品についてはもう内容をすっかり忘れていて、ラストシーン以外はほぼ記憶になかった。しかも、ドラマの舞台はずっと塹壕から動かなかったと思い込んでいたが、実はあちこちに移動しているのである。
昨年の「1917」(サム・メンデス監督)はワンカットふう映像の迫力だけで押し押しの作品だったが、この「西部戦線異状なし」には青年兵たちのドラマがあり、心に響く。
老教師にそそのかされて志願するドイツ人学生20人。彼らのうち何人が生きて帰れるのか? 凄絶な塹壕の中を主人公は何年も従軍している。ついには負傷して病院にかつぎこまれ、やがては帰宅できるのだが、よせばいいのにまた戦場に戻ってしまう。こうなると一種の中毒なのだろうか。いや、負傷が癒えた以上、原隊復帰はやむ得ないのだろう。しかし本人はそれをむしろ喜んでいる。
戦場の悲惨も敵兵への同情や悔恨も、上司への敬意と親愛も、すべてが最後の一瞬に無常へと散る。西部戦線は静かで特に書くこともない、と報告書に書かれた日、かけがえのない若い命は散った。
彼が愛した鳥たち、家族、仲間、それらがみな伏線となって最後の瞬間へと導かれる、見事な脚本だ。これはもちろん原作の力なのだろう。1930年の作品とはラストシーンが異なっていて、どちらがいいかは甲乙つけがたい。全体に前作よりも原作に忠実に作られているという。ぜひ前作も見直してみたいものだ。(AmazonプライムビデオWOWOWシネフィル)
1979
ALL QUIET ON THE WESTERN FRONT
イギリス 128分