吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

西部戦線異状なし

 Amazon.co.jp: 西部戦線異状なし(1979) (字幕版): リチャード ...

 今だけ無料なので見たこの作品は、かのルイス・マイルストン監督の名作のリメイクである。これがテレビドラマとは思えないほどの戦闘シーンの迫力には瞠目した。カラーになっている分も豪華な感じがする。

 名作と言いながら、1930年の作品についてはもう内容をすっかり忘れていて、ラストシーン以外はほぼ記憶になかった。しかも、ドラマの舞台はずっと塹壕から動かなかったと思い込んでいたが、実はあちこちに移動しているのである。

 昨年の「1917」(サム・メンデス監督)はワンカットふう映像の迫力だけで押し押しの作品だったが、この「西部戦線異状なし」には青年兵たちのドラマがあり、心に響く。

 老教師にそそのかされて志願するドイツ人学生20人。彼らのうち何人が生きて帰れるのか? 凄絶な塹壕の中を主人公は何年も従軍している。ついには負傷して病院にかつぎこまれ、やがては帰宅できるのだが、よせばいいのにまた戦場に戻ってしまう。こうなると一種の中毒なのだろうか。いや、負傷が癒えた以上、原隊復帰はやむ得ないのだろう。しかし本人はそれをむしろ喜んでいる。

 戦場の悲惨も敵兵への同情や悔恨も、上司への敬意と親愛も、すべてが最後の一瞬に無常へと散る。西部戦線は静かで特に書くこともない、と報告書に書かれた日、かけがえのない若い命は散った。

 彼が愛した鳥たち、家族、仲間、それらがみな伏線となって最後の瞬間へと導かれる、見事な脚本だ。これはもちろん原作の力なのだろう。1930年の作品とはラストシーンが異なっていて、どちらがいいかは甲乙つけがたい。全体に前作よりも原作に忠実に作られているという。ぜひ前作も見直してみたいものだ。AmazonプライムビデオWOWOWシネフィル)

 1979
ALL QUIET ON THE WESTERN FRONT
イギリス  128分
TVドラマ
 
監督:デルバート・マン
製作:
ノーマン・ローズモント
原作:
リッヒ・マリア・レマルク
出演
リチャード・トーマス